ドン・ボスコのサレジオ家族
アイデンティティー憲章
CARTA D’IDENTITÀ CARISMATICA
della Famiglia Salesiana
日本語版の出版によせて
ここにご紹介する『ドン・ボスコのサレジオ家族 ―アイデンティティー憲章』は、2012年1月31日、サレジオ会パスクアール・チャーベス総長によって発布されました。総長の言葉にもありますように、この『アイデンティティー憲章』は、先に出た『交わりの憲章』(1996年)と『使命憲章』(2000年)、それぞれの本質を取り入れ、まとめた
ものとして、私たちサレジオ家族の今後の歩みを導くものです。
私たちはさまざまなグループから成り、多様なものでありながら、一致させる絆をもっています。それは人間の思いによるものではなく、聖霊の賜物です。本書は、ドン・ボスコが聖母の仲介によって頂き、私たちが家族として受け継いでいるその恵み、カリスマを、さまざまな側面から表現しています。私たちはどのような家族であるのか、ど
のような共通の生き方に招かれているのかを謳っています。
ドン・ボスコ生誕200周年を準備するこの刷新の時に、個人で、また共同体、団体として、この本を手に取り、ぜひ深めていただきたいと思います。
カリスマ、そしてそこから生まれるアイデンティティーは、神さまからの贈りものです。それは、自分たちのものとして取っておくためではなく、教会をつくり上げるため、すべての人に奉仕する教会の使命にあずかるためのものです。神に感謝しつつ、この恵みを生きることは、社会の中で神さまの愛に応える私たちの道なのです。
ドン・ボスコが私たちの歩みを助け祝福してくださいますように。
私たちの母、扶助者聖マリアの取りなしを祈りつつ。
2012 年9月8日
サレジオ会日本管区長 アルド・チプリアニ神父
目次
日本語版の出版によせて
目次
はじめに
第1章 教会の中のサレジオ家族
第 1 条 創立者のカリスマ的・霊的体験
第 2 条 発展する家族
第 3 条 家族の構成
第 4 条 一致と多様性
第 5 条 三位一体の神秘:交わりの源泉
第 6 条 教会の交わりの中で
第 7 条 新しいキリスト教的ヒューマニズムのために
第 8 条 貴重な女性の貢献
第 9 条 連帯の新しい形のために
第10条 賜物の交流
第11条 マリアのおられる家
第12条 ドン・ボスコに結ばれて
第13条 サレジオ家族とサレジオ会総長
第2章 サレジオ家族の使命
第14条 教会の中で、教会のための、カリスマによる使命
第15条 使徒的な家族
第16条 「青少年、庶民、福音化されていない国民のもとに派遣されている」
第17条 福音に仕える
第18条 新たな宗教的・文化的環境の中で
第19条 使命における交わりと協働
第20条 各会の自立性と固有性
第21条 使徒職における共同責任
第3章 サレジオ家族の霊性
第22条 サレジオ家族の使徒的霊性の展望
第23条 父である神との協働
第24条 キリストの思いをもって生きる
第25条 聖霊に温順であること
第26条 教会の中の交わりと使命
第27条 日常の霊性
第28条 ドン・ボスコの「活動における観想」
第29条 ダイナミックな使徒的愛徳
第30条 統合の恵み
第31条 青少年への優先的な愛と、働く人々・庶民への献身
第32条 サレジオ的な慈愛(愛情)
第33条 希望のうちに楽観と喜びをもって
第34条 仕事と節制
第35条 創意工夫と柔軟性
第36条 サレジオの祈りの精神
第37条 扶助者聖マリア:使徒的霊性の師
第4章 サレジオ家族における交わりと使命のための養成
第38条 固有のアイデンティティーの認識
第39条 共同の養成
第40条 多様な働く場
第41条 協働の方法論
第42条 サレジオ家族の中の司祭の役割
第5章 サレジオ家族の構成、活性化
第43条 成長する家族
第44条 開かれた家族
第45条 拠りどころとなる中心
第46条 活性化を行う組織と会合の機会
第47条 祈り
はじめに
サレジオ家族の各会 代表者の皆様
兄弟姉妹の皆さん、
私たちはドン・ボスコの生誕200周年の祝いに向けて準備の3年間に入りました。この準備の3年間は、さまざまな形でサレジオ家族のすべての会とサレジオ運動全体が参加し関わるものです。2011年8月16 日から2015年8月16日まで続くこの準備と祝いの期間は、「恵みと刷新の時」です。ドン・ボスコのカリスマへの理解を深め、個人の生活および各会の生活にカリスマを浸透させるため、聖霊によってこの時が私たちに差し出されています。ここに皆さんにご紹介する私たち家族の「アイデンティティー憲章」も、この道を歩む私たちを触発し、導いてくれるでしょう。
1995 年1月31日、聖ヨハネ・ボスコの祝日に、ドン・ボスコの第7 代後継者であるエジディオ・ヴィガノ神父は、ドン・ボスコのサレジオ家族の「交わりの憲章」を発布しました。ヴィガノ神父はその序文に、憲章が何を示すものであるかについて書いています。「……ドン・ボスコの類ない精神を作り上げることに寄与する基本的要素です。私
たちは、家族の魂から出発することにしました。なぜなら、帰属意識は、……規定によるよりも……共有される精神の生き生きとした活力によって養われるからです。」この最初の憲章が差し出したサレジオの精神についての考察は、私たちが霊的な家族であること、したがって私たちの互いの絆の礎はその精神であると、理解するのを助けてくれます。
2000 年11月25日、私たちが尊者マンマ・マルゲリータの命日を記念する日に、ドン・ボスコの第8代後継者フアン・エドムンド・ベッキ神父はサレジオ家族の「使命憲章」を発布しました。ベッキ神父は序文で使命憲章が「サレジオ家族に所属する会の使徒的使命に関する方向性と感性」を提供すると書いています。「これは、私たちを照らす
光を与えてくれる文書だと言えるでしょう。本文書は、サレジオ家族に所属する会のメンバー一人ひとりに、サレジオ的特徴のある取り組みを呼びかけるものです」。この2つ目の文書は、私たちが使徒職の目的と意義をもって働く使徒的な家族であることを明確に打ち出しています。
2012 年 1 月31日、聖ヨハネ・ボスコの祝日に、その生誕200周年準備の最初の年、ドン・ボスコの第9代後継者として、私は「ドン・ボスコのサレジオ家族―アイデンティティー憲章」を皆さんにお届けします。これは私たち皆にとり、家族として歩む旅路の、また各会の固有の歩みのための拠りどころとなります。その最初の草稿は2011年5 月24日、扶助者聖マリアの祝日に出ました。私たちがカリスマにおいて成長できるよう、私たちの手にこの「扶け」を置いてくださるのは、私たちを照らし支えてくださるマリアご自身です。「マリアはドン・ボスコのサレジオ家族を新たにしてくださいます」と、総長としての最初の書簡でヴィガノ神父は書いています*1。マリアは今日もそのみわざを続けておられ、私たちの精神を照らし、私たちが共有するカリスマの新たな発展に向けて心を開かせてくださいます。
アイデンティティー憲章は、私たち家族の交わりと使命をそれぞれ取り上げた前の2つの文書から出発し、年月をかけて熟してきた考察や体験を集約するものです。前の2つの文書の本質的な要素は、この新たな文書に採り入れられています。実際、この新しい憲章は、サレジオ家族の特徴と固有の要素を説明します。それは言い換えれば、サレジオ家族のすべての会が自分たちのものであると認識する特質ですが、それを描き出すことにより、体験の共有、協働を可能にし、家族として目に見える存在になります。
*1 最高評議会報289「マリアはドン・ボスコのサレジオ家族を新たにされる」1978年3月25日、ローマ
先の2つの憲章を採り入れ統合する、この第3の憲章に描き出されるのは、サレジオ家族のカリスマにおけるアイデンティティーです。言い換えれば、使命、精神、関係性、養成、教育法、福音宣教に関わるあらゆることです。確かに、その起源と発展においてとらえられるカリスマの歴史はアイデンティティーの一部となります。実際、記憶のないアイデンティティー、根のないアイデンティティーには未来がありません。そのため、本憲章はサレジオ家族の各会の体験を集約し、私たち皆が遺産として受け継いでいるサレジオのカリスマのアイデンティティーを、要約の形で描き出します。
本憲章にある私たち家族のサレジオ・カリスマのアイデンティティーの描写は、長い時間をかけた考察と合意形成の歩み、特にサレジオ家族の世界諮問委員会によってたどられたプロセスの結果です。共通のアイデンティティーについてのより高い意識と分かち合いの期待される実りは、一致、帰属意識、家族としての意味が深まることです。実
際、アイデンティティーが弱いとき、理想は一貫性を失い、結びつきは弱まり、使徒職の意義が見失われます。そのため、教会全体への贈りものとすべく、共通のアイデンティティーを再活性化し、強めるよう、すべての会をここに招きます。
サレジオ家族を信じるならば、私たちは、サレジオ家族をアイデンティティーにおいて成長させるような熱意、内なる資源・手段、具体的な方法を見いだすことができるでしょう。そのとき私たちの家族は、新たな召命をひきつける生き生きとした活力を味わうでしょう。
私たちはこのことを、聖霊に、扶助者聖マリアに、ドン・ボスコに、そして私たち家族のすべての聖人と福者にゆだねます。
感謝をこめて。
2012 年1月31日 聖ヨハネ・ボスコの祝日 ローマにて
ドン・ボスコの第9代後継者 パスクアール・チャーベス・V
第1章 教会の中のサレジオ家族
第1条 創立者のカリスマ的・霊的体験
私たちは謙虚な喜びあふれる感謝のうちに、ドン・ボスコが神の導きとマリアの母としての仲介により、独自の福音的生活の体験を教会のうちに興したことを認めます。
聖霊はドン・ボスコのうちに神への大きな愛、兄弟姉妹、特に小さな者と貧しい者への大きな愛に満たされた心を造り、ドン・ボスコを多くの若者の父、師とし、また大きく広がる霊的・使徒的家族の創立者としました。
ドン・ボスコは、教育者、福音宣教者としての活動において、良い羊飼いのうちに源と模範が見いだされる牧者の愛から、絶えずインスピレーションを汲みました。また牧者の愛は、ドン・ボスコの生き方、祈り、宣教の熱意を導くものでした。Da mihi animas cetera tolleをモットーとして選ぶことによって、ドン・ボスコは神と青少年への情熱を表現したいと望んだのでした。それは、9歳のときの夢で見た使命を果たすために、いかなる犠牲もいとわない情熱です。
同時代の青少年と社会のふつうの人々の必要に応えるため、ドン・ボスコは1841年に、少年たちを受け入れる大きな家族として、オラトリオを開設し、また聖フランシスコ・サレジオ会を設立しました。ドン・ボスコは聖フランシスコ・サレジオ会が、教皇を一致の中心とする教会の中で、生き生きと働くものとなることを望みました。
1864 年のマリア・ドメニカ・マザレロとの出会いにより、ドン・ボスコは、教育の働きを少女たちのためにも広げるよう促しを受けました。そのためドン・ボスコは、マリア・ドメニカ・マザレロと共に、1872 年、教育事業に捧げられた扶助者聖母会(サレジアン・シスターズFMA)を創立しました。扶助者聖母会は、ドン・ボスコの精神のう
ちに、同時にモルネーゼの聖女による女性としての精神の生き方をもって、教育事業に取り組みました。
ドン・ボスコはまた、多くのカトリック信者と出会い、接触を保ちました。その人々は、青少年のため、また社会の人々の信仰の擁護と強化のため、さまざまな形で献身する人たちでした。ドン・ボスコは、この人々と共に一致して働くことによって力と効果が生まれることを体験しました。このようにして、サレジオ協力者会(現在のサレジアニ・コオペラトーリ)が誕生し、ヴァルドッコの精神に生かされて、青少年、社会の人々、宣教のための同じ使徒職を、家庭で、所属するキリスト者共同体で、社会の中で果たすことに献身しました。
ドン・ボスコは、この最初の3つの会の創立のために時間とエネルギーを注ぎ、養成と組織作りに献身しました。それぞれの活動の分野が異なることを認識しつつも、家族全体の使徒的な力が、目的・精神・教育の方法論とスタイルの一致にかかっていると、ドン・ボスコは常に確信していました。サレジオ会との、特にサレジオ会の長上である
総長との扶助者聖母会とサレジアニ・コオペラトーリの法的結びつきが、この一致のしるし、保証となりました。
扶助者聖マリア信心会(現在の扶助者聖マリアの会ADMA)も、ドン・ボスコによって創設されました。聖体の崇敬と扶助者聖マリアへの信心を広めるためです。ドン・ボスコの周りには、最初の同窓生たちも集まりはじめました。
第2条 発展する家族
「カリスマを与えられた偉大な人」*2として、また聖人として、ドン・
ボスコは教会において、修道・在俗の奉献生活の会および使徒的信徒
の会の創立者の中で、独自の地位を占めています。実際、私たちは驚
嘆と感謝のうちに、最初の種が、生き生きと生い茂る木になるまで成
長したことを認めます。
20 世紀の間に、また新千年期の初めに、数多くの新たな会が、ド
ン・ボスコによって創立された最初の4つの会に加わりました。ドン・
ボスコの霊的息子たちは世界のさまざまな国で、多様な社会・文化的
環境の中で、新たな会にいのちを与えるインスピレーションと導きを、
創立者から汲んだのです。それらの会は、時にはFMAとの協力のうち
に、またサレジアニ・コオペラトーリやサレジオ会事業の友人たちの
支えを得て、創立されました。
その多くは、サレジオ家族に所属する会であると、さまざまな理由
に基づいて公式に認められています。それらの会は固有の召命を与え
られていますが、ドン・ボスコを共通の「父」として認め、ドン・ボス
コの精神に生かされていると感じ、それぞれの特徴にしたがってその
精神を生きています。また、青少年、貧しい人、苦しむ人、まだ福音
を告げられていない人に仕えるという共通の使命にあずかっています。
この大きな家族の一員となる可能性に向けて歩んでいる会がほかに
もあり、このことは教会の尽きることのない活力の意味深いしるしと
なっています。
第2バチカン公会議の刷新が実施に移される中で、1つの霊的・使
徒的家族に所属するという意識は、ますます大きくなっています。サ
レジオ会の活性化の役割は明確にされ、なくてはならない拠りどころ
としてサレジオ会総長の存在が再確認され、会の間の交流が活かされ、
より深い兄弟的交わりと、ますます確信をもって取り組まれる養成と
宣教活動の分かち合いが実現するようになりました。
*2 サレジオ会 特別総会文書 7
第3条 家族の構成
「家族」という言葉は、各会をつなぐ結びつきを、そのさまざまなあ
り方において説明します。その結びつきは、単なる親しさや友情では
なく、内的・カリスマ的・霊的な交わりの形を取った表現です。したがっ
て、この言葉は、サレジオ家族へのさまざまなレベルでの所属につい
て説明するのに役立ちます。この帰属は、各会の特別な、固有の特質
を尊重しつつ、共有する精神から汲むものであり、その精神は、ドン・
ボスコのカリスマによって触発される使命の土台となります。そのた
めに賢明な識別の歩みが求められ、その結果として、サレジオ家族の
一員としての正式な承認へと至ります。
したがって、所属には、いくつか異なる資格によるものがあります。
第1のものは、サレジオ会、FMA、コオペラトーリ、ADMAが享受す
る資格です。これらはドン・ボスコによって創設された最初の4つの会、
ドン・ボスコの事業を直接継承するグループです。ほかのすべての会は、
精神、活動分野、教育・使徒的活動の方法論に関してこの4つの会を
拠りどころとする必要があります。
第2の資格は、ドン・ボスコの息子たちの創意に満ちた働きによっ
て生まれた、修道会と在俗会の両方を含む数多くの奉献生活の会、ま
たカトリック信徒の会に与えられます。これらの会は、特別なカリス
マ的・霊的な表現をもって、家族の共通の遺産に豊かさを加えます。
最後に第3のレベルは、特定の資格による人々から成ります。そ
れは幅広いサレジオ運動に参加し、サレジオ家族のうちにその活性化
の中核を見いだす人々です。この中に含まれるのは、ドン・ボスコの
友、サレジオ青少年運動、さらにより一般的には、サレジオ・ボラン
ティアの奉仕活動(VIS)、また幅広い範はん
疇ちゅう
の人々、教育者、カテキス
タ、さまざまな分野で働く人々、賛同する政治家、協働者、他の宗教・
文化の人々さえ含まれ、この人々は世界中で働いています。
14
家族の一員としての法的な資格は、各会の申請への回答となる、総
長からの公式の承認の手紙をもって授与されます。
第4条 一致と多様性
ドン・ボスコのサレジオ家族は、公的に創立され承認されたさまざ
まな会を擁するカリスマ的・霊的な共同体であり、霊的および使徒的
な絆によって結ばれています。
これらの共同体は、多様性にさまざまなものがあることを認めます。
男性、女性という性別、それぞれに異なる固有の召命、神の民への奉
仕としてのさまざまな司牧奉仕、男子あるいは女子修道者としての生
き方、奉献された信徒の男性・女性、独身のあるいは夫婦のキリスト者、
各グループそれぞれ独自の、またそれぞれの会則に定められた、サレ
ジオ的生き方の計画、各グループが暮らし働く、実に多様な社会・文化・
宗教・教会の環境などです。
一致が養われるのは:皆が教会の交わりのうちに三位一体の神秘に
引き入れられる、共通の洗礼の奉献によって;青少年と貧しい人々に
奉仕し、新たなキリスト教的ヒューマニズムを促進するサレジオの使命
への参加によって;世界規模の新たな市民感覚と連帯の意識によって;
ドン・ボスコの精神を共に分かち合うことによって;サレジオ家族の中
で霊的な賜物を分かち合うことによって;扶助者聖マリアと、自分たち
の聖なる創立者あるいは父であるドン・ボスコに、共に結ばれることに
よって;ドン・ボスコの後継者である総長との特別な絆によって、です。
第5条 三位一体の神秘:交わりの源泉
ドン・ボスコの使徒的家族は、第1に何よりもカリスマにおける家族、
すなわち、ある使命のために教会に与えられた聖霊の賜物です(1コリ
15
第1章 教会の中のサレジオ家族
ント12・1、4-6参照)。実際に、その最も真実な、最も深く下ろされた根
は、三位一体の神秘の中にあります。言葉を換えれば、父、子、聖霊
を1つに結ぶあの無限の愛、すべての人間の家族の源泉、模範、目標
である三位一体の神秘です。
三位一体の神秘を起源とするサレジオ家族のメンバーは、自分たち
の生活における、交わりである神の首位性を認めます。これが、サレ
ジオの霊性mysticismの中心です*3。
三位一体の神とのこの交わりは、各会の会憲文にふさわしく明文化
されています。
父なる神を拠りどころとすることは、お互いを兄弟姉妹として迎える
ようサレジオ家族の各メンバーや会を動機づけます。神に愛され、サレ
ジオの使命の広大な畑で共に働くように神に呼ばれたからです。それ
は、あらゆる恐れ、躊躇、疑いを乗り越え、それぞれが差し出すことの
できる、またすでに差し出しているものを感謝するようにとの招きです。
御父の使徒イエスを拠りどころとすることは、特に小さな人、貧しい
人、病気の人に遣わされたイエスの特徴のいずれかに注目し焦点を当
てるよう、各会を動機づけます。幼いイエス、少年イエス、ナザレの
イエスの隠れた生活、従順で貧しい、貞潔なイエス、善いサマリア人
として、子どもたちを祝福し、弟子たちや人々を周囲に集める善い羊
飼い、いけにえとして捧げられ、十字架の上でいつくしみ深い愛を示
されるキリスト、死者のうちから復活する人々の最初の実り・希望であ
る復活の主(1コリント15・20)などです。サレジオ家族はこのようにして、
それぞれの遣わされる対象となる人々のために、会によって異なる奉
仕を提供しながら、主イエスのあらゆる姿勢や行動を生きようとします。
聖霊を拠りどころとすることは、サレジオ家族の実り豊かさに結び
つきます。創立者ドン・ボスコを興し、霊的子孫を与えたのは聖霊だ
*3
16
エジディオ・ヴィガノ、閉会のあいさつ、Atti del Convegno di studio sulla Animazione della
Famiglia Salesiana. Roma 1980, 56 参照
からです。このようにして、各会は、それぞれの創立者の働きを通し
て生まれてきましたが、その創立者たちは皆、家族の父、ドン・ボス
コに結ばれています4。 したがって、カリスマの多様性と、キリスト者共同体にさまざまなグ ループが数多く増えることを評価し、教会の枠さえも越えて人々の良心 のうちにおられる聖霊を認めるように5、そして知恵をもって、すべての
善意の人との対話と協働の関係を築くよう、聖霊は皆を促しておられます。
第6条 教会の交わりの中で
神の霊は、「全体の利益のため」(1コリント12・7)に多様なカリスマ
を信徒に分配します。人類の救いという使命を教会が果たせるように、
教会の営みの中に調和あるかたちでカリスマを注ぎます6。 聖霊は、実に多彩な奉献された男女の会の起源です。これらの会は、 教会の使命に効果的に貢献しながら、さまざまな賜物をもって教会を 豊かにし、神の多様な知恵を示し、唯一の・聖なる・普遍的・使徒的 な教会自身の特徴を目に見えるものにします7。
サレジオ家族は、キリスト者の男性・女性、奉献された男性・女性
から成ります。個々の人はその人自身のカリスマと精神をもって、教
会の使命に仕えるために自分自身を差し出します。それは特に、大き
く広がる若者の世界、労働者層の人々の暮らす地域で、貧しい人々の
ため、まだ福音を伝えられていない人々のためです(使徒的)。
サレジオ家族は、教会の中心・心にあって生き、サレジオの使命を
遂行しながら、さまざまな賜物を反映させ、1つの霊的・使徒的家族の
*4
*5
*6
*7
特別総会文書171参照
現代世界憲章22e参照
参照 教会憲章12b、信徒使徒職に関する教令3c
修道生活の刷新・適応に関する教令1b
17
第1章 教会の中のサレジオ家族
うちにそれぞれの固有の召命を一致させ、神の民への奉仕へと方向づ
けられたさまざまに異なる奉仕職の交わりを表します(普遍的)。
サレジオ家族は、地方教会の中にあって、教会のメンバーの交わり、
またペトロの後継者との交わりを促進し、そのようにして、ドン・ボ
スコから受け継いだ教皇への忠誠を生きます(一致)。サレジオ家族は、
地方教会の使徒的活動に参加し、固有の貢献を果たします。特に青少
年と社会の中で働く人々の福音化の領域において貢献し、一人ひとり
の全人教育のため、ほかのグループや組織との理解・協働を促進しま
す。召命のための導きを若者に差し出し、信仰教育を行い、教会の中で、
そして社会のために使徒職に献身する道を示します。さまざまな会は、
教育の使命を果たすために同窓生の助けをよく活かしています。同窓
生の中には、異なる宗教や世界観をもつ人々もいます(普遍的)。
ドン・ボスコのサレジオ家族は、カリスマに由来する特徴的な霊性
を発展させながら、キリスト者としての生き方の独自なモデルをもっ
て、教会という体全体を豊かにします*8(聖なる)。このことをあかしす
るのは、すでに聖人に列せられた、あるいは列福・列聖手続きの進ん
でいる、数多くのドン・ボスコの霊的な息子、娘たちです。
第7条 新しいキリスト教的ヒューマニズムのために
ドン・ボスコの使徒的家族がサレジオ家族と呼ばれるのは、聖フラ
ンシスコ・サレジオに結ばれているためです。ドン・ボスコは聖フラ
ンシスコ・サレジオを自らの導き手、保護者として選びました。ドン・
ボスコは、聖フランシスコ・サレジオの生き方や著作と共に自分自身
の深い望みに合致していたそのキリスト教的ヒューマニズムと愛徳の
表現を、模範として示しました。
*8
18
特別総会文書159参照
それは、人間の弱さを無視することのない、同時に一人ひとりの人
間が本来もつ善良さへのゆるぎない信頼に基づくヒューマニズムです。
一人ひとりは神に愛され、置かれたあらゆる状況・身分においてキリ
スト者としての完徳に招かれていると考えるものです。
このヒューマニズムは、ドン・ボスコの創立した会のカリスマ的・
霊的体験を構成する要素であり、今日1つの家族に集められたほかの
会も、尊い遺産としてこれを自分たちのものとしています。
したがって、サレジオ家族全体はこの大きな運動に参与し、教育の
分野、そして使徒的事業において独自の貢献を教会に提供します。
ドン・ボスコにとって「サレジオの」ヒューマニズムは、一人ひと
りの人間・被造物・歴史的出来事のあらゆる肯定的な事柄に、ふさわ
しい価値を認めることを意味しました。このことによってドン・ボス
コは、この世に存在する真に価値あるものを、特にそれが青少年にとっ
て好ましいものであるとき、受け入れるように導かれました。同時
代の文化の流れと人間社会の発展の中に身を置き、良いものを奨励し、
悪を嘆くことなく、賢明に多くの人々の協力を求めました。発見し認
められ、よく活かすべき賜物が一人ひとりのうちにあると確信し、若
い人の成長を支え、誠実な市民、善いキリスト者となるよう励ます教
育の力を信じ、そして、いつでも、どこでも、神の摂理に自らをゆだ
ねるよう導かれました。それは父として見なされ、愛される神です。
ドン・ボスコは、家族を作り上げる各会の創立、そして宣教地への
派遣など、そのほかの使徒的取り組みによって、19世紀に進行した世
俗化のただ中に回復される、あるいはまだ福音化されていない場所に
建設される、「キリスト教的価値に根ざした社会」という計画の達成の
ために、自らの貢献を果たそうとしたのです。
サレジオ家族の各会は、ドン・ボスコへの創意豊かな忠実のうちに、
教会と諸宗教・現代社会との関係に関して、第2バチカン公会議の促
進する新しい指針とその後の教会の公式の教えに従いながら、今日の
19
第1章 教会の中のサレジオ家族
社会に自分たちの奉仕を差し出すために献身します。それは、諸宗教
間の対話9、人間と家庭の尊厳の擁護、正義と平和の促進10、特に多文化
的な状況における諸文化間の対話、被造物(自然・環境)の保護など
を中心とした奉仕です。
第8条 貴重な女性の貢献
最初に創立された会、またその後、創立された会のサレジオ的体験は、
女性たちの意味深い、効果的な貢献から生まれ、豊かにされました。
ドン・ボスコがマンマ・マルゲリータから多大な影響を受けて、予
防教育法を作り上げ、ヴァルドッコに顕著に見られる家庭的雰囲気を
生み出したことは周知のことです。
また、マリア・ドメニカ・マザレロも忘れることができません。マー
ドレ・マザレロは、ドン・ボスコの体験を女性らしく表現しました。
そして霊的生活と教育的・使徒的生活の両方においてこれに具体的な、
独自の顔を与えることができ、それはサレジアン・シスターズの真の
遺産となっています。
フィリッポ・リナルディ神父の指導を受けた最初のVDB(ドン・ボ
スコ女子在俗会)は、サレジオ家族に女性の在俗奉献生活をもたらしま
した。メンバーは貞潔・清貧・従順の誓願の霊的絆によって互いに結ば
れ、家庭や日常の仕事の場で、共有のサレジオの使命を果たしています。
サレジオ家族の中の、20世紀に生まれた新たな奉献生活の会のほと
んどすべての始まりには、キリスト者の小さなグループが見られます。
それは一般に貧しい状況の中、すでにさまざまな形で使徒的な事業に
献身し、奉献生活という理想を育み、司教あるいはサレジオ会司祭の
指導を受け、新たな創立にいのちを与え、発展させています。
*9
*10
20
参照 教会憲章16、キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言2‐5
20 世紀の最後の数十年に、女性の正当な位置づけについて、世界
各地で考察が行われ、サレジオ家族の各会、特に修道会、女子在俗会、
サレジオの信徒の会は、ヨハネ・パウロ2世によるさまざまな側面に
おいて革新的な教えの指針に従いながら、世界における女性の感性に
よる貢献を、ふさわしく評価するようになりました11。 第9条 連帯の新しい形のために 現在のグローバル化の現象は、経済、文化、政治、宗教の領域で、個人・ 国民の間の相互依存を高めています。活かすことのできる機会も明ら かに見られますが、同時にそれが新たな貧しさの原因となり、疎外を 助長するような支配の形になってしまう危険も見られます。しかし、 グローバル化についてもう1つの考え方があります。福音的価値に触 発され、導かれる連帯の考え方です。 「ゆえにこの態度は、至るところに存在する無数の人々の不幸、災い に対するあいまいな同情の念でもなければ、浅薄な形ばかりの悲痛の思 いでもありません。むしろそれは、確固とした決意であり、共通善に向 かって、すなわちわたしたちは、すべての人々に対して重い責任を負う がゆえに、個々の人間の善に向かい、人類全体の善に向かって自らをか けて、共通善のために働くべきであるとする堅固な決断なのです。」12
サレジオ家族の各会は、さまざまな教育的・使徒的活動を通して、
この連帯の実践に取り組んでいます。
1. 教育。アシステンツァが提示する規準にのっとって理解され、
実践されるとき、連帯の最も高度な形となります。今日、それは、「寄
り添うことの倫理」という言葉で説明できます。言葉を換えれば、
一人ひとりの人間の状況に関わること、友情と信頼の関係、青少
*11
*12
参照 使徒的書簡『女性の尊厳と使命』20、21、28‐31;使徒的勧告『奉献生活』57‐58
使徒的回勅『真の開発とは』38
現代世界憲章77‐93
21
第1章 教会の中のサレジオ家族
年と貧しい人々の最も深い望みに耳を傾けること、可能で効果的
な応答を見いだすこと、忠実に共に歩むことです。
2. ボランティア活動(社会におけるボランティア活動、海外宣教
地ボランティア)。今日、ボランティア活動は若者や大人の間に大
きく広まり、ある人たちにとっては自分の時間とエネルギーを差
し出す心構えを求められる、本物の召命になっています。奉仕活
動によって人々の具体的な問題と出会い、開発のための取り組み
を支援し、共同責任の感覚をもつように招かれ、人に与え、奉仕
することを学ぶように促されます。
3. 社会的、政治的な取り組み。教会教導職の打ち出す規準に従い、
特に信徒の会によって遂行されます。現代世界憲章に次のように
あります。「人々に対する奉仕として、国家の福祉のために尽くし、
またこの任務の重責を引き受ける人々の働きを教会は賞賛に価す
るものとして高く評価する。」13また『信徒の召命と使命』には次の ようにあります。「信徒は『公共生活』への参加を放棄することは 絶対にできません。公共生活とは、組織的にまた制度的に共通善 を促進することを目的としている経済、社会、法律、行政、文化 上の多様な分野を意味しています。」14
第10条 賜物の交流
同じサレジオのカリスマと精神を受け継ぐものとして、各会は互いの
間に親しい関係を築きます。各会は、常にほかのメンバーとの結びつき
のうちにサレジオ家族の一員としてのアイデンティティーを表明します。
実際、固有の召命によってある会に入会するということは、その会の
属する家族に入ることを意味します。それはあたかも、相互的な関係の
*13
*14
22
現代世界憲章75
使徒的勧告『信徒の召命と使命』42b
うちに、各々がほかのメンバーにゆだねられていると感じるかのようです。
そのとき家族は、さまざまな会のおかげで、賜物と価値の完成を生
きることができます。なぜなら、共通の遺産であり、そのためどのサ
レジアンの心にも欠けることのない霊的特質のうち、それぞれ会によっ
て特定のものが強められているのを見るからです。家族の交わりは、
それらを皆のものとします。
このすべては使命のためです。なぜなら、それによってより適切で
効果的な方法で、青少年、貧しい人々、病気の人々、まだ福音を告げ
られていない人々の人間的向上とキリスト教的教育に取り組むことが
可能になるからです。
本物の交わりがなければ、ドン・ボスコの計画はしだいに貧しいも
のになってゆき、不忠実にさえ陥る危険があることを、比較的短いサ
レジオ家族の歴史は示してくれます。ほかのサレジオ家族がいなけれ
ば、ある会のメンバーは自分自身になれないという認識をすべての人
が培わなければなりません。その認識によって、ふさわしい表現や具
体的な姿勢が生まれてきます。
第11条 マリアのおられる家
ドン・ボスコにとってマリアは、子どものころから自分の先生、母
でした。9歳のときに見た夢の中の人が、そのようにマリアを指し示し
たからです。
ドン・ボスコはその地方の教会の慣習に従い、最初に取り組んだ教
育事業を、なぐさめの聖母に捧げました。「貧しく、危険にさらされた」
少年たちは、聖母の加護となぐさめを意識するようになりました。
後にドン・ボスコは、マリアに関する教義宣言の時を生きる普遍教
会との交わりのうちに訳注、愛することを教えられる方、人間として、
キリスト者としての成長を力強く支えてくださる方として、無原罪の
23
第1章 教会の中のサレジオ家族
マリアを少年たちに示しました。
そしてついにドン・ボスコは、自らの事業の創立と発展において、
奇跡的な方法さえ用いて「マリアがすべてをなされた」ことに気づき、
新しく生まれた修道会を、「キリスト者の扶け(扶助者)」という称号
で呼ばれるおとめマリアに捧げました。
そして、扶助者聖母会の創立というインスピレーションをマリアか
ら受けたドン・ボスコは、この会が、扶助者聖母への感謝の「生きた
記念碑」であることを願いました*15。またドン・ボスコは、使徒職にお
いて守られ、キリスト者の扶けのうちにインスピレーションを見いだ
すよう、サレジアニ・コオペラトーリをも扶助者聖マリアにゆだねま
した。また、すべての事業において母として共にいてくださる聖母へ
の感謝のしるしとして、トリノの大聖堂に結ばれた扶助者聖マリア信
心会(現 扶助者聖マリアの会)を設立しました。
このようなマリアとの特別な結びつきは、20世紀の間に生まれたサ
レジオ家族のさまざまな会の、カリスマ的・霊的アイデンティティー
に深いしるしを刻んでいます。教会によって公的に認められた名称に
マリアの名を入れている会もあります。イエス・マリアの御心修道女会、
無原罪の扶助者聖マリアのカテキスタ姉妹会、汚れなきマリアの御心
侍女会、扶助者聖マリア宣教姉妹会、元后無原罪の聖マリア修道女会、
扶助者聖マリア姉妹会などです。
サレジオ家族のすべての会はキリスト者の扶け聖マリアを崇敬しま
すが、中には、自らの使徒職の特定の側面を強調するために、ほかの
称号によってマリアの存在を表現する会もあります。
マリアは教会の母、キリスト者の扶けとされるだけでなく、全人類
訳注 1854年12月8日、教皇ピオ九世は無原罪の聖マリアの教義を宣言。聖母マリアは原罪な
くしてその母の胎に宿られた=初めから原罪を免れているというこの教えの聖書的な根拠は
天使ガブリエルの聖母へのあいさつの言葉などにあり、民衆の信心は古くからあった。
*15
24
FMA会憲、第4条。参照 MB X, p.265(英語版。以下同じ)
の母と見なされます。こうして、ほかの宗教をもつ人を含め、協働者、
男性や女性、サレジオ家族のさまざまな会の人々が、聖母への心から
の信心を培うことができます。
したがって正当に、サレジオ家族はマリアの家族である、と言うこ
とができます。
第12条 ドン・ボスコに結ばれて
ドン・ボスコは、使徒的霊性の真の学び舎を開きました。今日、聖
霊の特別な促しに応え、さまざまな生き方の身分、多様な献身の形の
うちにドン・ボスコの使命を共にするように呼ばれていると感じるす
べての人にとり、ドン・ボスコは立ち帰ることのできる拠りどころです。
このことは、サレジオ家族に所属する各会は一致の中心であるドン・
ボスコを囲んで集う、ということを意味します。実際、20世紀に生ま
れた各会の創立者たちは皆、ドン・ボスコの霊的息子たち、ドン・ボ
スコの修道会の会員です。彼らが絶えず心にかけていたのは、新しい
環境において、そして自分たちの父であり師であるドン・ボスコの精
神を注いだ新たな使徒的な力を結集して、広大な使命を遂行すること
でした。各会とそのメンバーを1つの家族に結ぶのは、ドン・ボスコ
との霊的な絆です。その絆は、教会において特定のカリスマを与えら
れた人々を1つに結ぶ方、聖霊によるものです。
この絆による関係は、ドン・ボスコの牧者の愛のうちに表現を見い
だします。使徒的情熱こそ、霊魂を探し求め、神だけに仕えるようドン・
ボスコを駆り立てた霊的エネルギーでした。それは人の心、精神を満
たす愛徳、大きく広がってドン・ボスコの事業に安定をもたらす計画
を満たす愛徳です。そのため、ドン・ボスコはさまざまな人々を周囲
に集めました。それぞれの役割、多様な賜物、またさまざまな身分や
奉仕職を調整し、調和させました。
25
第2章 サレジオ家族の使命
ドン・ボスコは、絶えず神との関係に開かれた内的生活のうちに大
きな力の源泉を見いだしました。私たちにとってもまた、教育的・使徒
的な愛のために、内的生活の具体的な、要求の高い形が必要になります。
第13条 サレジオ家族とサレジオ会総長
ドン・ボスコの使徒的家族への所属の源泉は交わりにあり、交わりに
よって養われます。それは、聖霊に一致することです。聖霊は、サレジ
オ家族を一致へと導き、存在を与え、効果的な関係と活動における協働
を確かなものにするために、具体的な形、公式な形さえ与えられます。
したがって、サレジオ家族の一員であるために、ドン・ボスコとの
結びつき、共通の使命、同じ精神との結びつきを現実のものとする、
なくてはならない中心が必要になります。
ドン・ボスコの思いにおけるこの中心は、サレジオ会総長です。皆
が総長のうちに、一致のための3通りの奉仕職を認めます。ドン・ボ
スコの後継者、共通の父、家族全体の一致の中心です。所属を希望す
る会をサレジオ家族に迎えるには、定められた規範に従い、総長の公
的な権限により、承認が与えられます。
このような使命を与えられているサレジオ会総長は、家族の各会に
おけるカリスマの実り豊かさを確かなものとするため、必要な指針を
出す務めがあると感じます。模範と教えを通して一致を築き、個々の
召命の多様性のうちに、同じ精神への忠実と、取り組みの連携調整を
確保します。総長はこの奉仕を、ドン・ボスコ自身のものであった父
性をもって果たします。それは、理解と慈愛、一人ひとりの成長への
配慮、導きとカリスマにおける忠実、あらゆる表現におけるサレジオ
の召命の実り豊かさのための献身を求められる姿勢であり、ドン・ボ
スコが次のように書いたとおりです。「あなたの総長は、あなたたちと、
あなたたちの永遠の救いの世話をします。」
26
第2章
サレジオ家族の使命
第14条 教会の中で、教会のための、カリスマによる使命
教会の使命は、御父の自由な主導からあふれ、イエス・キリストを通
して、聖霊の働きによって永続するものとなります16。使命は1つであり、 洗礼と堅信によって、神の民のすべての人に託されます。しかしながら、 聖霊が特別なカリスマを与えるということは、派遣される対象となる人・ グループにより、さまざまな形で使命が遂行されることを意味します17。
ドン・ボスコとドン・ボスコの霊的家族の使命は、使徒職へのキリ
スト者共通の召命の一部をなしています。しかし、それが霊的な賜物
への応答であるため、その起源はカリスマ的なものです。かつてドン・
ボスコを青少年と労働者層の人々に遣わされたように、歴史の進展の
中で、青少年、労働者層、宣教地のための使徒職を永続的なものとす
るため、ドン・ボスコの霊的息子・娘たちを遣わし続けておられるのは、
御父の霊、復活された主の霊です。
この固有の使命は、中でも、時のしるしの影響を受け、それに応
えようとするものです*18。私たちにとって、青少年、特に貧しい青少
年、社会のふつうの人々、まだ福音を告げられていない人々のニーズ
や期待、望みや霊的な必要は、時代が変わり、社会的・文化的に異な
る状況において、聖霊がサレジオ家族のさまざまな会を呼び、使命を
果たすために遣わされるしるしです。教会において、教会のために遂
*16
*17
*18
参照 教会憲章2‐4、教会の宣教活動に関する教令2‐4、エキュメニズムに関する教令2
参照 教会憲章9b、13ab、17、32、信徒使徒職に関する教令 2a、教会の宣教活動に関す
る教令 2a、5、6、10、35‐37
現代世界憲章11参照
27
第2章 サレジオ家族の使命
行されるこの使命は、教会による承認、教会の指導と法に従うものです。
カリスマによる使命が、さまざまなレベルで、教会活動の調和ある遂
行の中に位置づけられるためです。
そのとき、カリスマによる使命はその具体的な適用を、サレジオ家
族の各会の固有の会則のうちに見いだします。聖フランシスコ・サレ
ジオ修道会、扶助者聖母会(サレジアン・シスターズ)、およびほかの
修道会においては、遣わし任務を与えるのは、会憲によって定められ
たそれぞれの長上です。場合によって、合議的な集いが、遣わし任務
を与える主体になることもあります。これは例えば、総会による最高
評議員の選挙などです。
VDB などの在俗会、またサレジアニ・コオペラトーリやDamas
Salesianas(サレジオ婦人会)、そのほかのサレジオの信徒の会の場合、
遣わす権威を有するメンバーはいません。しかし、個人は、会則に定
められた使命に関する規定に忠実に従う責任があります。それぞれの
会則は、社会におけるサレジオの使徒職の具体的な実施について、固
有の法に基づき、述べるものです。
第15条 使徒的な家族
サレジオ家族は使徒的な家族です。サレジオ家族を構成する各会は
皆、さまざまな度合い、さまざまな形で、共有する使命に奉仕する責
任ある主体です*19。
ドン・ボスコは、その創立にあたり、聖フランシスコ・サレジオ修
道会と扶助者聖母会を観想会ではなく、「使徒的」な会として作り上げ
ました。ドン・ボスコの霊的息子らである創立者たちの意向にしたがい、
今日、サレジオ家族に所属するほかのすべての修道会は、明らかな使
*19
28
徒的方向性をもち、「使徒的」と認められる諸修道会の中に位置づけら
れています。いくつかの会は、多様な状況や文化の中で、すべての人
にad gentes 福音を告げる働きの一翼を担うという目的をもって、いわ
ゆる「宣教」地で誕生しました。次の会はその範疇に入ります。イエ
スのカリタス会、汚れなきマリアの御心侍女会、扶助者聖マリア宣教
修道女会、無原罪の扶助者聖マリア・カテキスタ姉妹会、元后無原罪
の聖マリア修道女会、主の宣教姉妹会、扶助者聖マリア宣教姉妹会。
サレジアニ・コオペラトーリ、Damas Salesianas(サレジオ婦人会)、
復活の主のあかし人、Comunidade Canção Nova(新しい歌共同体)は、
使徒的な信徒の会であり、ドン・ボスコとそれぞれの創立者の使命を、
幅広く、在俗の形で実践するという目的をもって創立されています。
VDB、元后無原罪の聖マリア会、Volontari Con Don Bosco(CDBドン・
ボスコ男子在俗会)、弟子の会はいずれも、使徒的な目的をもつ在俗会
です。メンバーは、家庭、職業の世界、社会的な関わり、市民として
の務めの中で在俗的なサレジオの使徒職を果たします。
特定の会に所属する一人ひとりのメンバーは、それぞれの固有の召
命によって遣わされています。したがって、それぞれにゆだねられた
役割、恵まれている能力や可能性に従って、共有する使命を果たすよ
う呼ばれています。
サレジオ会、扶助者聖母会、そのほかの修道会においては、それぞ
れの会憲に基づき、使命はまず共同体─管区および支部共同体─によっ
て取り上げられ、遂行されます。したがって、共同体は使命の第1の
主体です。
第16条 「青少年、庶民、
福音化されていない国民のもとに派遣されている」
サレジオ家族の使命は、教育の主体であるとともに受益者である青
特別総会文書163
29
第2章 サレジオ家族の使命
少年と大人を対象とし、それぞれの社会・文化・宗教・教会的状況に
あって、また「宣教地」への特別な配慮をもって遂行されます。この
ことを示すために、青少年・庶民・福音化されていない国民のもとに
遣わされている、という言い方が現在、用いられるようになっています。
この3つの次元は、互いに補い合うものです。
1.
2.
30
若者に遣わされている。ドン・ボスコの明確な意向によれば、彼
が創立したサレジオ家族の会が奉仕する、優先的な対象者は、見
捨てられ危険にさらされている貧しい青少年、あるいは現代的に
言えば、経済的貧困、愛情の貧しさ、文化的、霊的な貧しさのた
めに最も困窮する男女の青少年です。この選びはほかの会も明
確な形で共有し、それぞれの会憲にも明記されています。各会は、
若者の世界の中で、使徒的召命、信徒の召命、奉献生活、司祭職
への召命のしるしの見られる若者に特に配慮します。
優先的に思春期の子どもと青少年男子に関心を向ける会もあり
ます。あらゆる成長段階における青少年女子を優先的に対象とす
る会もあります。さらに、区別を設けずにすべての青少年のため
に働く会もあります。深刻な疎外・搾取・暴力の犠牲者である男子・
女子の青少年に特別に奉仕する会も多くあります。
庶民・社会のふつうの人々に遣わされている。天の照らしを受け、
ドン・ボスコは大人にも目を向けました。優先的に、素朴な貧し
い人々、労働者、都会の一般庶民、移民、疎外された人々に注意
を向けました。ひと言で言えば、物的・霊的な助けを最も必要と
するすべての人です。ドン・ボスコの指針に忠実に、サレジオ家
族の各会はこの優先的選択を共有しています。扶助者聖マリアの
会は新しい会則(2004)に、特に社会のふつうの人々に仕えるサ
レジオの使徒職に関わる条項を加えました。
なりません。それは、人を愛し、いのちを受け入れることへと若
者を準備させる場であり、人々の間の、また異なる国民・民族の
間の連帯を学ぶ最初の学校です。サレジオ家族の皆が、家庭に尊
厳が与えられ、健全な土台の上に立てられるために働きます。家
庭がますます明らかな形で「家庭の教会」*20となるためです。
その特別なカリスマによって、サレジオの使徒職を特殊な範疇
の人々のために果たす会もあります。イエス・マリアの御心修道
女会は、ハンセン氏病の人々に、イエスのカリタス会はお年寄りに、
Damas Salesianas(サレジオ婦人会)は病気の人に奉仕します。
3.
福音化されていない国民のもとに遣わされている。ドン・ボス
コは福音宣教の理想を培い、当時の教会の宣教事業に具体的な形
で参加しました。彼は、サレジオ会と扶助者聖母会が「宣教地」
のために働くことを望みました。こうして2つの修道会はその始
まりのときから宣教師を派遣し、驚くべき発展によって世界のす
べての大陸に広がりました。サレジアニ・コオペラトーリも、そ
の創立当初から宣教への協力を不可欠な特質としていました。扶
助者聖マリア宣教姉妹会と無原罪の扶助者聖マリアのカテキスタ
姉妹会も、宣教事業に優先的に献身します。サレジオの使徒職の
この形は明らかに、VDB、イエス・マリアの御心修道女会、サ
レジオ御心奉献者会、イエスのカリタス会、復活の主のあかし人、
Damas Salesianas、主の弟子の会などの会の使命に含まれています。
第17条 福音に仕える
神の御子は、「いのちを愛される」父のみ顔を現すために、そして人々、
特に助けと希望を最も必要とする人々の物的・霊的「幸福」に仕える
*20
教会憲章11b
人間的成長の始まる場である家庭に、特別に目を向けなければ
31
第2章 サレジオ家族の使命
ために受肉されました。「人の子が来たのも、仕えられるためではなく、
仕えるためであり、また多くの人の贖いとして、自分の命を与えるた
めである」(マルコ10・45)。
ナザレのイエスが教えられた模範に倣い、教会は、また教会の中の
サレジオ家族は、福音を告げ知らせ、すべての人を満ち満ちたいのち
へと招くために、人類に仕えます。
公会議後の教導職の指針21によれば、その奉仕には次のことが含まれ ます。社会事業やさまざまな教育活動を通しての人類社会の刷新;キ リスト者としての個人また共同体のあかし;宗教教育や要理教育を通 して福音を直接的に告げること;諸宗教対話(特に生活と祈りを共に すること)、他の宗教の人と協力して不正と闘うこと、教会の一員にな る決心をした人に同伴することなどを通しての宣教の働き;祈りの活 性化。特にキリスト者共同体の典礼;人間として、キリスト者として の連帯の多くの取り組み;宣教における協力のさまざまな形;宗教へ の無関心や無神論の強い地域における福音宣教する存在などです。 「よいキリスト者、誠実な市民」を育成するという目標を、ドン・ボ スコは人間として、キリスト者として満ち満ちた生き方をするために 青少年が必要とするすべてを示すために、最もよく言い表していまし た。必要とするものとは、衣服、食べ物、住まい、勉強、余暇、喜び、 友情、生きた信仰、神の恵み、聖性の道、参加、ダイナミズム、社会 と教会の中の一人ひとりの場所などです。ドン・ボスコはその教育的 体験を通して、ある計画、取り組みのスタイルを作り上げ、自らそれ を予防教育法のうちにまとめました。「全面的に道理、信仰、慈愛(愛情) に基づくもの」22です。
サレジオ家族の各会は、ドン・ボスコの直観と体験を再び取り上
*21
*22
32
参照 パウロ6世回勅『福音宣教』、ヨハネ・パウロ2世回勅『救い主の使命』
G. BOSCO, Il sistema preventovo nella educazione della gioventù, in PIETRO BRAIDO
(ed.), Don Bosco Educatore, scritti e testimonianze, LAS, Roma³1997, p.248ss
げ、公会議によって新たにされた教会論および福音宣教に関する教皇
の教えに照らし、これを再解釈し、多様な表現で説明しながら、教育
者、福音宣教者として働きます。予防教育法に従って実践される「教
育・司牧奉仕」、「福音化することによって教育し、教育することによっ
て福音化する」、「予防教育法のスタイルで実践される全人教育」、「愛
情に基づいた教育」によって教育し、福音化する、など、さまざまな
同様の表現があります。
基本的に、サレジオ家族が多様な形で福音的奉仕を実践する3つの
領域があります。人間の向上、教育、福音宣教です。
すべての会にとり、福音を告げあかしすることとして理解される福
音宣教は、それぞれの使命の優先目標です。
第18条 新たな宗教的・文化的環境の中で
サレジオ家族は、そのすべての構成員の刷新と交わりの歩みにおい
て、新たな文化的状況における宣教の取り組みに関わる、ある根本的
な選択をするに至っています。ますます急速に変化してゆくメンタリ
ティーや習慣、人の移動の加速、同じ地域にさまざまな宗教・文化の人々
が暮らすといった特徴をもつ、新たな文化的状況です。
1. サレジオのヒューマニズムの促進。一人ひとりの人間を中心に
置きます。一人ひとりの尊厳を、そのあらゆる表現において守り、
促進しなければなりません。教育の視点からは、このことは青少
年のあらゆる可能性を目覚めさせ、発揮させることです。考える力、
情操の豊かさ、自由へと方向づけられ、恵みによって強められた
意志の力です。
真に人間的なあらゆる価値に、それぞれにふさわしく重きを置
きます。その中には、仕事と文化、友情の絆と社会的責任、芸術
33
第2章 サレジオ家族の使命
的才能、専門的能力と学問的功績、私生活・公生活における道義
的な誠実さ、生活に味わいをもたらす日常のささやかなこと、こ
れらの価値を皆が守り、促進しなければなりません。
さらに、サレジオのヒューマニズムは日常の生活に意味を与え、
一人ひとりと社会のために希望の理由と将来の展望を提供しよう
とします。
最後に、サレジオのヒューマニズムは、社会および教会の中に
自分にふさわしい場を見いだせるように一人ひとりを助け、すべ
ての若者は自らの召命を発見できるように助けてもらう権利があ
ると認めます。
2. 具体的な状況に取り組む。世界各地で働くサレジオ家族のすべ
ての会にとって、一人ひとりを大切にするために献身すること
は、社会・文化・宗教の観点から多様で複雑な各地域の状況のため、
容易な挑戦ではありません。生じてくるニーズに応える、可能で
効果的な取り組みを見いだすために必要なのは、教皇と地方教会
の司牧者の指針から常に汲みながら、その地域の状況を賢明に適
切に理解する力量です。
3. 存在意義をもつように配慮する。差し出すことのできるものを
分かち合うあかしの価値、長い時間をかけて人々に直接耳を傾け
ることから生まれてくる具体的な取り組みの提案、共通の目標を
もって未来のために真剣に協力して働くときに始まる互いに学び
合うプロセスなどによって、存在意義をもつようになります。
そのとき人々は、次の困難に立ち向かい、可能な道を見いだし
ます。人や組織に関して生じる問題;異なる立場や信条を尊重し
ながら、同時に道徳的価値を守り促進すること;過去の体験から
出発し、未来にまなざしを向けながら見いださなければならない
新たな解決策;最も弱く危険にさらされた人々の権利の擁護;政
治の領域、特に教育政策の立案される場における効果的な存在;
34
人間的・福音的・サレジオ的な価値に養われる世論の促進。
多様な地理的・文化的状況において、サレジオ的存在の意義に
さまざまな規範があるのは明らかです。あるところでは可能で適
切なことが、ほかのところではそうでないかもしれません。ある
人たちが特定の状況でできることが、ほかの人たちにとっては不
可能かもしれません。同じ1つの使命に忠実であることは、同一
の歩みを人々に押し付けるものではありません。
4. 広報の挑戦への取り組み。ドン・ボスコは広報の有効性をはっ
きり認識し、個人・共同体の成長の手段として、同時に社会の人々
の間で信仰を守り広める手段として、広報をよく活用する任務を
霊的家族にゆだねました。
今日、情報技術の手段によって、かつては私的なことと考えら
れていた事柄が公にされるようになりました。それは瞬間的に広
がっていく形で働き、多くの人が参加し、特に若者をひきつけ、人々
の考え方、関係のあり方に変化を生じさせ、ライフ・スタイルの
提案を広めます。それは、必ずしもキリスト教的価値観に基づく
ヒューマニズムに調和するとはかぎらないライフ・スタイルです。
一方、これらの手段は、教育と福音宣教のための新たな機会を
提供します。実際、ネットワークや遠距離のコミュニケーション
によって生まれる可能性のため、さまざまなことを行い、かつて
は想像もできなかったような方法で協同の働きを作り上げること
ができるようになっています。ドン・ボスコの使徒的家族は、革
新的な創意工夫によってすでに取得している手段と合わせ、これ
らの未開拓の可能性をサレジオの使命のために活用し、社会の提
供する機会をとらえようとするものです。
35
第2章 サレジオ家族の使命
第19条 使命における交わりと協働
私たちの家族を一致させる絆は、「使命における交わり」*23です。した
がって、各会は、共通であると同時に多様な福音への奉仕を果たしな
がら、神から来る交わりの賜物を生きるように呼ばれています。奉仕
は会によって、それぞれの対象者、固有の目的、さまざまなスタイル
にしたがって、多様なものになります。
ドン・ボスコは、教育者、牧者、創立者としてのあらゆる活動において、
一人ひとりの可能性や賜物を認識する非常に優れた能力を表しまし
た。協働者の中で最も若い者にも責任を与え、使徒職において多種多
様な技能を調和させ、各自の適性・能力・養成に合う仕事を一人ひと
りのために見いだしました。教育・司牧の奉仕において、協力して愛
徳を発揮する必要性を、ドン・ボスコは常に認識していました。聖霊が、
全教会の益のためにカリスマを興されると確信していたのです。
使命における、また使命のための各会の間の交わりは、教育と宣教
への取り組みにおいてますます不可欠なものと考えられるようになっ
ています。実際、活動を連携させ、信仰の生き方のさまざまなモデル
を示し、司牧奉仕を補完し合うものにすることが緊急に必要であると
認識されています。
このように、共に働くことによって、あかしをより効果のあるもの、
告げられる福音をより納得のいくものとし、より生き生きとした使徒
的愛徳を育み、交わりと使命における家族のアイデンティティーを考
察し、表現しながら、各会の特質をよりよく評価できるようになります。
このため、各会の自立性を大切にしながら、協働のあり方を保ち、
必要であれば可能な新たな方法を見いださなければなりません。
36
第20条 各会の自立性と固有性
使命における、使命のための交わりは、家族の各会の自立性と固有
性を損なうことなく、むしろそれを明らかにし、強化します。
実際、各会は、霊性・養成・財政・統治における自立性を発揮する
だけでなく、それぞれの組織や固有のやり方にしたがって使命を果た
しながら、使徒職においても自立しています。
実に家族であるということは、画一的な活動を皆に強いることでは
ありません。そのようにするなら、それぞれの違いをなくすことになり、
使徒職に混乱と不確かさをもたらすでしょう。それはむしろ、皆が共
有するプロジェクト全体の中で、各会の行っていることを調和させる
ことです。
したがって、交わりにおける各会の固有性を認め、促進しなければ
なりません。若者たちには、各会が提供する固有の奉仕を受け、活か
す権利があります。それはサレジオ家族にとって、また全教会にとっ
て豊かさとなり、このようにして、青少年の善益のために働くますま
す多くの人々の力が結集されていきます。この自立性における交わり
は使命における共同責任への招きですが、必ずしもあらゆる事業、あ
るいはすべての場所で共同責任の形を取らなければならないというこ
とではありません。
第21条 使徒職における共同責任
共同責任のために前提となるのは、各会が自らの成長、メンバーの
養成、使徒的事業に自立的に取り組む力を確保し、できるかぎり効果
的に固有の召命と使命を果たし、会の中に忠実さと創意工夫の実りで
ある活力を確かなものとすることです。
そこで次のことが期待されます。①各会の間のさまざまな形の協働。
*23 『信徒の召命と使命』32参照
37
第2章 サレジオ家族の使命
多様な部門や分野、さまざまな事業でサレジオの使命が果たされるよ
うに。②同じ地域に暮らし働く各会の間の協働。地方教会の司牧組織
や民間の組織と連携しながら、愛の文明を共に築くことを目指し、サ
レジオの貢献を果たすためです。サレジオの貢献は、豊かさや内容の
多様なものです。
共同の計画を遂行するには、自分の所属する会の特定のものの見方、
あるいは将来の展望をあきらめることを意味する、歩み寄りのプロセ
スが、時には求められることは明らかです。
いずれにしても、共同責任によって、共同で目指す目的のために共
同で取り組むことが求められます。すべての会は共に、福音の価値に
基づいて、ドン・ボスコの使徒的家族のカリスマ的・霊的アイデンティ
ティーの特質をもって、外へと向けて広がるように呼ばれています。
それは家族全体の特質であり、したがって一部の会の関心にとどまる
ことはありえません。個々の会員を含めて皆が一人ひとり、受け取っ
た霊的遺産を活気づけ、促進することに責任をもっています。
各会が認識し、実現に努めなければならない目的は次のものです。
1. 現在の歴史的状況の中での教育の問題を共有する。生きること
の基本的価値に基づいて少年・少女を教育する最良の方法を探求
し、彼らが福音に出会うよう導く。
2. 予防教育法を知らせる。予防教育法はドン・ボスコの教育の知
恵の総合であり、後継者と全教会にドン・ボスコが残した預言的
メッセージです。道理・信仰・愛情に基づく、霊的・教育的体験です。
道理は、キリスト教的ヒューマニズムの価値を明確に示します。
意味の探求、仕事、勉学、友情、快活さ、信仰心、責任ある自由、
人間としての健全な判断力とキリスト教的知恵の調和など。
信仰は、救いの恵みを受け入れること、神への望みを培い、主
キリストとの出会いを育むことです。それによって、教会の生活
38
と使命の中に自らの場を見いだしながら、生きることの十全な意
味が与えられ、幸福への渇きに答えが見いだされます。
愛情は、効果的な教育的関係を築くには青少年を愛するだけで
なく、彼らが愛されているとわかるようにする必要があることを
表します。それは青少年の心にある、あらゆる潜在的な力を目覚
めさせるような関わりと愛情であり、全面的自己贈与に至るほど
の成長へと導きます。
今日、これまでにもまして、道理、信仰、愛情は、教育事業に
おいて不可欠な要素になっています。新たな世代の期待に応える
ため、より人間らしい社会を生み出すための、価値ある推進力に
なっています。
3. サレジオの精神を、一人ひとりのあかしと言葉によって広める
こと。サレジオのヒューマニズムは一人ひとりにかけるものであ
り、時に困難な状況であっても、これを広めるようすべての教育
者に求めます。それは、新しい愛の文明の礎になります。
4. サレジオ運動の促進。ドン・ボスコは、教育・福音宣教の事業
に参加するよう多くの人を招きました。少年たちと貧しい人々に、
あらゆるレベルで関心が向けられるようにしました。大きな広が
りをもつサレジオ運動と、その中で働くさまざまなグループ同士
の連携は、皆の益となる貢献をしています。
39
第3章 サレジオ家族の霊性
第3章
サレジオ家族の霊性
第22条 サレジオ家族の使徒的霊性の展望
使徒的霊性は、サレジオ家族の使命における、また使命のための、交
わりの生活を照らし活気づける中心です。実際、それは、人間の計画に
よるものではなく、またいかに完璧であっても組織化の働きによるもの
でも、人々を1つに集める優れた技術によるものでもなく、牧者の愛か
らあふれる交わりです。その牧者の愛は、聖霊によってドン・ボスコの
心に呼び覚まされ、聖性の高みに至るほどドン・ボスコを触発しました。
霊性とは、私たちの生活が聖霊に導かれることです。聖霊は、1つの
家族に属するさまざまな会にご自分のカリスマを与えられます。使徒
的とは、献身と奉仕へと駆り立てる内的な力を意味します。それは教
育と福音宣教の働きに救いをもたらす効力を与え、生活全体を、この
インスピレーションを中心として統合します。
サレジオ家族のメンバーは、信仰、希望、愛に動かされ、一人ひと
りにご自分のあわれみ深い愛を伝えるために絶えず働いておられる神
のみわざにあずかります。そして教会の交わりと使徒職に全面的に参
与するものであると感じます。
第23条 父である神との協働
神を自分の生活の統合の中心、兄弟的交わりの源泉、活動のための
インスピレーションとしてお迎えすることは、ある神のイメージを前
提とします。自らの孤独と不動の沈黙の中に沈み、地上のことに関心
のない、遠い神ではなく、人類に自らを全面的に与えてくださった愛
41
第3章 サレジオ家族の霊性
の神です(1ヨハネ4・16参照)。「今もなお働いておられる」(ヨハネ5・
17)父、子どもたちの生活を共にし、具体的な形で、人々の期待に限
りない愛をもって応えておられる神です。私たちの歴史に関わるあま
り、ご自身を人間の自由にゆだねられる神、拒絶される危険を受け入れ、
ゆるす愛(アガペ)として絶えずご自分を与えられる神です*24。
この神は、沈黙のうちに、しかし効果的に歴史のうちに働かれながら、
活発にたゆみなく働く協力者たちを招かれます。協力者たちは、生活
の具体的な状況において、愛し、与え、仕えるための力を神から汲み
ながら、神の愛を告げ知らせ、良いわざを行うことにエネルギーのす
べてを注ぎます。
サレジオ家族とそのメンバーにとり、「神の現存のうちに生きる」こ
とは、神との強い、たゆみない絆を培うことを意味します。したがって、
神の愛にかたどられた愛に満たされるのを感じます。自らを愛のうち
に無私の心で与え、使命の特別な対象である人々のために報いを期待
せずに尽くす愛です。また、私たちの時代の人々の期待や要請のうちに、
神の神秘的な現存のしるしを見ることができ、それに応えることがで
きることを意味します。
ドン・ボスコが心からの祈り≪Da mihi animas, cetera tolle ≫を捧げ
たのは、この神、あわれみ深い父でした。ドン・ボスコは自分の弟子
たち皆に繰り返し言います。「神聖なことがらのうちで最も神聖なこと
は、霊魂の救いにおいて神に協力することです。それは最も高い聖性
への確かな道です。」
第24条 キリストの思いをもって生きる
ドン・ボスコは、聖体に現存されるイエスへの、また神なる救い主
*24
42
ベネディクト16世、使徒的回勅『神は愛』10参照
への、確信に満ちた信心を自らの霊的生活と使徒的活動の中心に置き
ました。聖体に現存されるイエスをドン・ボスコはしばしば「この家
のご主人」と呼び、神なる救い主の救いの働きに倣いたいと願いました。
洗礼によってキリストに接木された私たちは、キリストと1つにな
るために、聖霊の働きに温順に自らをゆだねます。聖パウロと共に次
のように言うためです。「わたしにとって生きるということはキリスト
です」(フィリピ1・21)。「生きているのは、もはやわたしではなく、キ
リストこそわたしのうちに生きておられるのです」(ガラテヤ2・20)。同
時に、使徒の次の勧めにも耳を傾けます。「キリスト・イエスが抱いて
おられたのと同じ思いを抱きなさい」(フィリピ2・5)。
その思いとは:あらゆることにおいて聖霊に導かれ、神に遣わされ
た者であるという目覚めた意識でいること;困難や反対に勇気をもっ
て立ち向かいながら、ゆだねられた使命の遂行において父のみ旨に無
条件に従順であること(ヨハネ5・17~);あらゆるさまざまな死から人々
を解放するために、たゆみなく、惜しみなく献身し、すべての人にい
のちと喜びを伝えること;良い羊飼いの心で、小さな人々、貧しい人々
に情熱的な配慮を注ぐこと;十字架上でいけにえとなるほどに、絶え
ずゆるす愛;エマオに向かう2人のためにそうされたように、弟子た
ちの旅の仲間となる約束。
私たちの活動のインスピレーションとなるのは、特に良い羊飼いの
イメージです。それはサレジオの使徒的霊性の2つの大切な側面を示
しています。
第1に、主の使徒は、自らの意識の中心に一人ひとりの人を置き、
その人をありのまま愛します。偏見も例外もなく、まさに良い羊飼いが、
道を外れた羊にもそうされるように。
第2に、使徒は自分を前面に出さず、いつも、主イエスだけを指し示
します。あらゆる形の隷属から解放できる唯一の方、永遠のいのちの牧
場へと導くことのできる唯一の方(ヨハネ10・1-15参照)、迷う者を決して
43
第3章 サレジオ家族の霊性
見捨てず、その弱さをご自分のものとし、信頼と希望に満ちて探しに出か
け、見つけ出し、豊かないのちを生きるよう、連れて帰られる唯一の方です。
ドン・ボスコの息子、あるいは娘にとり、キリストに根ざし、キリ
ストに似た者に変えられることは最も深い喜びです。このことから、
次のことが生じます。み言葉への愛と教会の典礼に表れるキリストの
神秘を生きる望み;キリスト者の自由、回心、分かち合いと奉仕の精
神を教えてくれる、聖体とゆるしの秘跡に心をこめてあずかること;
個人また共同体として、内的また社会的に、生きることとその意味に
ついて新たな理解に道を開く、主の復活の神秘への参与。
第25条 聖霊に温順であること
キリスト者の生活は本質的に、聖霊における生活です。第2バチカ
ン公会議が促進した刷新の歩みを共にするサレジオ家族は、聖霊の真
の賜物、その使徒的家族に活力を与えた霊性の源である、ドン・ボス
コのカリスマにしたがって自らのアイデンティティーを定め、復活の
主の霊との絆を深めるよう努めてきました。
啓示されたみ言葉が語る聖霊という方の特質は、サレジオ家族のさ
まざまな会に属する人々の霊的・使徒的生活のために、特に光を与え
てくれます。聖霊は創り主であり、いのちを与える方です。救いのみ
わざを歴史において継続するため、御父と復活された主によって遣わ
されます。信じる者を真理/キリストに導くのはこの方です。信じ
る者がキリストのうちに、キリストによって生きるために。この方
は、真理の光に心を開かせ、愛の賜物を受ける準備を整えさせるために、
人々の良心に語りかけます*25。聖霊は、キリスト者共同体のうちに特に
生き生きと働いておられ、交わりと奉仕において一致させ、信徒のう
*25
44
ちに使命に仕える精神を注ぎます。聖霊は、福音宣教に献身する人々
の先に立ち、支え、同伴される方です26。 サレジオ家族のメンバーが身につけるように呼ばれている聖霊への 姿勢は:私たちがいつも聖霊の力に支えられている確かさのうちに、 穏やかに信頼すること;聖霊のひそやかなインスピレーションに温順 であること;個人・共同体における人間的な出来事のうちに、聖霊の 現存を賢明な識別をもって認めること;人々の生活、教会、社会に神 の国が到来するよう、聖霊の働きに賢明と勇気をもって協力すること; ドン・ボスコのカリスマに感謝し、ドン・ボスコの教育的・使徒的計 画の実現のために惜しみなく働くこと。 第26条 教会の中の交わりと使命 ドン・ボスコは教会への大きな愛を抱き、教会共同体への帰属意識の うちに、それを表しました。同時に、青少年の教育のための特別なカリ スマを受けていると意識していたドン・ボスコは、さまざまな文化的環 境において教会を築き上げるために、そのカリスマを発展させました。 ドン・ボスコの家族の家宝の中には、ペトロの後継者への子として の忠実、また地方教会との交わりと協働という豊かな伝統があります。 「教会と教皇に関することなら、どんな苦労も取るに足りない。」27「教
皇の望みは、私たちにとって命令です。」*28
ドン・ボスコにおいて、教皇へのこの無条件の献身は教会への愛の
表現でした。それは、受け継いだ遺産として、私たちが受け入れ、生
きるものです。
実際、教会は、人類の歴史における復活されたキリストの目に見える
*26
*27
*28
教会の宣教活動に関する教令4
MB V, p.383、会憲第13条
MB V, p.380参照
参照 信徒使徒職に関する教令29c、現代世界憲章22e
45
第3章 サレジオ家族の霊性
現存です。信仰の一致における、また多様なカリスマと奉仕職における、
兄弟姉妹の交わりです。福音を告げ知らせることによって神の愛を知
らせるよう私たちを駆り立てる愛です。神のご計画に則した世界を築
くために人類に差し出される奉仕です。主キリストのうちに一致の中心
を、またペトロの後継者のうちに一致への奉仕者を見る、1つの家族です。
ドン・ボスコから私たちが受け継いだ霊性は、際立って教会的なも
のです。教会の交わりを表現し、養い、キリスト者共同体のうちに兄
弟的関係と積極的な協働のネットワークを作り上げます。それは、若
い人、貧しい人が教会で安心していられ、また教会を築き上げ、その
使命に参加することができるように彼らを助ける、教育的な霊性です。
ドン・ボスコの数多くの息子、娘たちの聖性の賜物によって、全教会
を豊かにする霊性です。
第27条 日常の霊性
ドン・ボスコは聖フランシスコ・サレジオからインスピレーション
を汲みました。本質的なものに基づいているので単純素朴な、すべて
の人に開かれているので誰にとっても近づきやすい、人間的な価値に
満ちているので魅力的な霊性の師として、したがって、教育事業に特
別に適した模範として、聖フランシスコ・サレジオを認めました。ジュ
ネーヴの聖なる司教は、その基本的作品(『神愛論』)の中で「忘我の
状態ecstasy」について語ります。この言葉は、特異な霊的現象を意味
するというよりも、自分自身から出て行き、他者に向かうことを意味
します。それは、神にひきつけられ、確信を与えられ、神の支配に明
け渡し、神の神秘にますます深く分け入る人の体験です。
聖フランシスコ・サレジオにとっては、忘我の状態には3種類あります。
・知的なもの:これは、神がどのような方であるかを見て感嘆すること、
また創造のみ業のうちに神がなさった大いなること、今もひきつづき一
46
人ひとりの人生において、そして人類の歴史においてなさっておられ
ることに感嘆することです。それは、み言葉の黙想において用いるなら、
よりはっきりと見えるようになるまなざしです。実際、神がごらんにな
るように物事を見られるように私たちの目を開かせるのは、み言葉です。
・情操的なもの:これは、私たちへの神の愛を体験することです。そし
て、その愛に応えたいという望みが大きくなります。その愛に養われ
る私たちは、神の栄光と神の国のために自分の能力やいのちを捧げら
れるようになります。絶えず目覚めていること、心の清め、祈りの実
践がその前提になります。
・活動と生活におけるもの:これは聖フランシスコ・サレジオにとり、
前の2つの上に頂点を飾るものです。知的忘我は空論に、情操的忘
我は単なる感傷に終わる可能性があります。一方、活動の忘我は、神
から来るもの以外ではありえない、寛大な無私の心を明らかにします。
そしてそれは、さまざまな形で表れる愛徳のうちに、人々の善のため
に具体的、効果的に献身することへと変換されます。
サレジオ家族は、創立者ドン・ボスコの姿を考察し、聖フランシスコ・
サレジオの霊性と霊的生活mysticismの特質を、1つの簡潔な、挑戦を
投げかける表現にしました。「日常の霊性」です。
第28条 ドン・ボスコの「活動における観想」
ドン・ボスコの霊的生活mysticismはDa mihi animas, cetera tolle
というモットーのうちにその表現を見いだし、聖フランシスコ・サ
レジオの「活動の忘我」と同一に見なされるものです。それは、思
い、気持ち、意志が神との一致のうちにある、日常的な活動の神秘です。
兄弟姉妹の必要としていること、特に青少年の必要、そして使徒的な
配慮が、祈りへの招きとなる一方、絶えず祈ることが、神と共に兄弟
姉妹の善益のために惜しみなく、自己犠牲的に働く姿勢を養います。
47
第3章 サレジオ家族の霊性
これは、ドン・ボスコの内的生活をよく知っていた福者フィリッポ・
リナルディが次のように説明した、「活動における観想」の霊的生活で
す。「ドン・ボスコは、外的活動を内的生活と最も高度に結び合わせま
した。疲れを知らない、全身全霊を打ち込む活動、大きな広がりをもち、
多くの責任を伴う活動と、神の現存の感覚をいしずえに、少しずつ、習
慣的な、たゆむことのない持続的な、生き生きとした本質的なものになり、
神との完全な一致に至る内的生活とを結び合わせました。このようにし
て、ドン・ボスコは、活動における観想、活動の忘我というあの完徳の
状態に至りました。ドン・ボスコは、生涯の最後までその状態の中にあ
りました。歓喜のうちにある穏やかさ、霊魂の救いへの思いのうちに。」*29
サレジオ家族は、ドン・ボスコが生き抜き、すべての霊的弟子たち
に貴重な遺産として残してくれたこの霊的生活を取り上げ、生きます。
第29条 ダイナミックな使徒的愛徳
ダイナミックな使徒的愛徳は、ドン・ボスコの精神の中心、サレジ
オ的生き方の本質、サレジオ家族のメンバーの使徒職の推進力です。
「愛」は、神の名そのものです(1ヨハネ4・16参照)。それはただ単に
人間の心がもつ力を示すだけではなく、御父の先立つ愛、キリストの
共感するあわれみの心、聖霊の言葉に尽くせない愛にあずかることで
す。主の弟子たちを見分ける特徴はこれです。すなわち、神が愛され
る同じ愛で互いに愛し合うことです。
使徒的:私たちが豊かないのちを受けられるようにイエスを遣わさ
れる、御父の無限の愛にあずかること。すべての人の救いを願う、良
い羊飼いの切なる望みにあずかること。人々の良心に、人々の人生に
おいて働かれる聖霊の、愛のあふれる流れに開かれることです。
*29
48
RINALDI F., Conferenze e scritti (LDC, Leumann – Torino 1990) p.144
ダイナミック:生き生きとした活動、新しいことを取り入れる力量
を表します。すでに行われていることで満足しないこと、惰性に流さ
れないこと、あらゆる生ぬるさや安楽を避け、むしろ、情熱と創意工
夫をもって、青少年の世界と労働者層の人々の期待に具体的に応える
ために、最も必要とされる効果的な方法を探求します。
以上のことは、ドン・ボスコがオラトリオの心と呼ぶものです。それ
は熱意、情熱、可能なあらゆる手段を駆使し、新たな道を探すこと、試
練に遭ってもくじけないこと、敗退しても再び立ち上がる意志、養われ、
培われ、広く伝えられる前向きな心です。それは、自己贈与の輝かしい
模範をマリアのうちに見いだす、あの信仰と愛に満ちた他者への配慮です。
乳幼児や子どもを対象としてサレジオの奉仕を行う会においては、
ダイナミックな使徒的愛徳は、福音的な慈愛になります。思春期の子
ども・青年たちを教育する会では、成長と発展という目標のための受容、
参加、導きとなります。さまざまな貧しさに苦しむ人々の世話に献身
する会においては、あわれみ深い、支える愛の色合いをもちます。病
気の人、高齢の人のために働く使徒職の会では、共感に満ちた愛とな
ります。イエス・マリアの御心修道女会においては、特にハンセン氏
病の人々への献身的な愛として表れます。辺へん
鄙ぴ
な所に点在する遠隔地
の村々や、都会のスラムの中に暮らす貧しい人々のための、サレジオ
の使徒職にたずさわる会においては、自分自身を差し出し共に歩む連
帯の愛となります。
第30条 統合の恵み
この使徒的愛徳の源泉を表現するのにサレジオの人々の間で用いら
れる言葉は、次のものです。統合の恵み、使徒的な内的生活、生活の
観想的側面、生き生きとした総合、1つの愛の動きとなる神への愛と青
少年への愛、生活の典礼。
49
第3章 サレジオ家族の霊性
教育することによって福音化し、福音化することによって教育する、
という言葉は、サレジオ家族のメンバーの内的統合を表現するものと
して今やよく知られています。これは教育の方法について言及するだ
けでなく、一人ひとりの、また各会の霊性について言及するものだか
らです。人は聖霊の導きにゆだねるとき、ちょうど、祈りと活動、神
への愛と隣人への愛、自分への関心と他者への献身、人間的価値の教
育と福音を告げ知らせること、会への所属と教会の一員であることが
統合されるのと同じように、生活と使徒職は1つの全体性をもつもの
になります。すべては統合へと向かいます。それは聖性という、生き
生きとした総合です。ここから、聖霊の力によって、活動とあかしの
ための驚くべき力が生まれます。聖霊は人々をご自分のものとして取
られ、みわざのための、自由な、喜びあふれる道具とされます。
使徒的愛徳は、サレジオ家族に所属するすべての人にとり、日常の
多様な活動や務めを統合することのできる内的原理、力です。それは
使徒的愛徳の切り離すことのできない2つの柱、神への情熱と、隣人
への情熱を、1つの内的な動きによって融合させます。
第31条 青少年への優先的な愛と、働く人々・庶民への献身
青少年と社会の働く人々への使命を効果的に遂行するため、ドン・
ボスコのすべての弟子は青少年への真の優先的な愛を培い、働く人々・
庶民のために献身します。ドン・ボスコの弟子たちは、まさに遣わさ
れる対象である人々を通して神を体験すると確信しています。青少年、
社会のふつうの人々、特に貧しい人々です。
少年・少女たちは、サレジオ家族への神の賜物であると認識されます。
主は、またマリアは、青少年をドン・ボスコの働く領域として示され
ました。私たち皆にとり、青少年はサレジオの召命と使命の対象です。
青少年のために献身するということは、心を絶えず青少年に向け、
50
彼らの望みや願い、問題やニーズを受けとめることです。それはまた、
青少年が成長する歩みの中で彼らと出会うことを意味します。それは、
ただ共にいるためだけでなく、むしろ彼らが呼ばれているところへ導
くためです。そのため、教育者は、青少年が内にもつ善に向かう力を
認め、人間として、キリスト者として成長する過程で支え、彼らと共に、
彼らのために、可能な教育的な機会を見いだします。情熱に満ちた教
育者や福音宣教者の心には、パウロの言葉がいつも響いています。「キ
リストの愛がわたしたちを虜とりこ
にしている」(2コリント5・14参照)。
社会のふつうの人々・労働する人々の世界は、私たちが青少年に出
会う自然な、日常的な環境です。特に最も助けを必要とする青少年です。
ドン・ボスコの家族の献身は、社会のふつうの人々に向けられ、人間
的な向上と信仰における成長への人々の努力を支え、自分たちの掲げ
る人間的・福音的価値を指し示し、促進します。いのち・生きること
の意味、よりよい将来の希望、連帯の実践といった価値です。
ドン・ボスコはまた、サレジアニ・コオペラトーリ、扶助者聖マリ
アの会と共に、大衆的な信心をよく活かしながら、人々の信仰教育の
道を開きました。
さらに、ドン・ボスコは、広報の促進に取り組みました。教育と福
音宣教という目的のため、可能なかぎり多くの人々にメッセージを届
けるためです。
第32条 サレジオ的な慈愛(愛情)
ドン・ボスコの慈愛(愛情)は、疑いようもなく、ドン・ボスコの
教育法の特徴です。この教育法は、キリスト教的な環境においても、
ほかの宗教に所属する青少年の暮らす環境においても、今日なお、効
果的なものと考えられています。
しかしながら、この教育法は単なる教育原理にとどまるものではな
51
第3章 サレジオ家族の霊性
く、私たちの霊性の本質的要素として認識されなければなりません。
実際に、それは本物の愛です。なぜなら神から力を汲むものであるか
らです。それは単純さ、誠実さ、忠実さのうちに表れる愛、相手と対話
したいという望みを生じさせる愛、信じる心を呼び覚ます愛、信頼と深
いコミュニケーションへの道を開きます(「教育は心に関わることです」
ドン・ボスコ)。周りに向かって広がり、そのようにして家庭的雰囲気を
作る愛です。そのとき、共にいることは美しいこと、豊かなことになります。
教育者にとり、それは強い霊的な歩みの努力を求められる愛です。
進んでそこにいてとどまる意志、自己放棄と犠牲、愛情における貞潔
と態度の自己抑制、対話に参加することと、最も適切な時、最良の方
法を見いだすために待つ忍耐、ゆるし、関係を新たにできること、手
放すことを知ると同時に、無限の希望をもって信じ続ける人の柔和へ
の努力です。修徳がなければ真の愛はありえず、祈りにおける神との
出会いがなければ、修徳はありえません。
慈愛(愛情)は、牧者の愛の実りです。ドン・ボスコはよく言いました。
「相互的な愛情は何に基づいているのでしょうか?〔…〕イエス・キ
リストの尊い御血によってあがなわれたあなたがたの霊魂を救いたい
という私の願いです。そしてあなたがたは、私が永遠の救いの道を歩
むようあなたがたを導こうとするので、私を愛してくれます。したがっ
て、私たちの霊魂の善益が私たちの愛情の礎です。」*30
このようにして、慈愛(愛情)は神の愛のしるしとなり、ドン・ボ
スコの善良さに触れた心が神の現存に気づくための手段となります。
それは、福音宣教の道です。
このことから、サレジオ家族の使徒的霊性の特徴は、漠然とした愛
ではなく、相手を愛し、自らも愛される者となることができる愛であ
るという確信が生まれます。
*30
52
ジュゼッペ・ラッツェーロ神父とヴァルドッコの職人見習いの共同体への手紙, 1874年1
月20日, Epistolario, vol.IV p.208, フランチェスコ・モット編, LAS Roma 2003
第33条 希望のうちに楽観と喜びをもって
ナザレのイエスのうちに、神はご自身を「喜びの神」*31として明か
され、福音は人々が神ご自身の幸いにあずかる「真しん
福ぷく
八はっ
端たん
」をもって
始まる「良い知らせ」です。この賜物は取るに足りないものではな
く、深い意味のあるものです。なぜなら、喜びは、束の間の感傷であ
るよりもむしろ、人生の困難を前にして抵抗できる内的な力だからで
す。聖パウロは言います。「わたしは慰めに満たされており、どんな苦
しみに遭っても、この上なく喜びに溢れているのです」(2コリント7・4)。
この意味で、地上で私たちが体験する喜びは、復活の賜物、永遠にお
いて私たちのものとなるあの完全な喜びの前味わいです。
ドン・ボスコは少年たちの幸せになりたいという望みを受けとめ、
彼らの生きることの喜びを、快活さ、遊び場、祝いという言葉に換え
ました。しかし、真の喜びの源は神であると、彼らに指し示すことを
決してやめませんでした。『青少年宝鑑』(青少年のための祈りの本)、
ドメニコ・サヴィオの伝記、ヴァレンティーノの物語の中の解説など、
ドン・ボスコによるいくつかの作品は、ドン・ボスコが明らかにした
結びつき、神の恵みと幸福の間にある結びつきを示しています。そし
てドン・ボスコが「天国の報い」を強調したことは、地上での喜びが
完成され、満ち満ちるという展望に目を向けさせるものでした。
サレジオ家族のメンバーは、ドン・ボスコの学び舎で喜びを育み、
それを人々にもたらす姿勢を培います。
1. 善の勝利に信頼する。ドン・ボスコは書いています。「最も頑な
な少年たちも、心のどこかに柔らかいところがあります。教育者
の第1の務めは、その感受性のあるところ、打てば響く少年の心
*31
聖フランシスコ・サレジオ, Lettre à la Présidente Brulart, Annecy, 18 février 1605,
Oeuvres, vol.XIII, p.16
53
第3章 サレジオ家族の霊性
の琴線を見つけ出し、それを活かすことです。」*32
2. 人間的価値の評価。ドン・ボスコの弟子は、この世の良いもの
を採り入れることができ、同時代を嘆きません。特にそれが若者
や人々に好まれるものならば、良いものをすべて受け入れます。
3. 日常の喜びを教える。創り主が日々、私たちの歩みの途上に与
えてくださる数多くの人間的な喜びを知り、あるいは再認識し、
単純に喜び味わうために、忍耐強い教育的働きかけが必要です。
ドン・ボスコの弟子たちは、日々、全面的に「喜びの神」に自らをゆだね、
「喜びの福音」を言葉と働きによってあかしするので、常に朗らかです。
彼らは、聖パウロの勧めに心をとめながら、この喜びを広め、キリスト
者の生き方の幸いと、祝いの心を教えることができます。「主において
つねに喜びなさい。重ねて言います。喜びなさい。」(フィリピ4・4)
第34条 仕事と節制
使徒的愛徳の実践には、回心と清めの必要性が伴います。言い換え
ると、新しい人が生まれ、生き、成長するために、古い人が死ななけ
ればなりません。新しい人は、御父の使徒であるイエスにかたどられ、
日々、使徒職において自らを犠牲にする心構えをもちます。自らを与
えるということは、自分を空しくし、人々に神を与えることができる
ように、神に満たされることです。離脱、自己放棄、犠牲が本質的な
要素になります。苦行を好むためではなく、ただ愛の論理によってで
す。修徳なしに使徒職はありえず、霊的生活なしに修徳もありません。
使命のために全面的に献身する人には、特別な苦行は必要ありません。
生活の中の苦労と使徒職による疲労を信仰のうちに受けとめ、愛をもっ
*32
54
て捧げるなら、それで十分です。
ドン・ボスコの勧める修徳は、さまざまな側面をもっています。謙
遜の修徳。神のみ前で自分をただしもべ以外の何者でもないと感じる
こと。自己抑制の修徳。自分をコントロールし、感覚や心を守り、安
楽の追求によって心の寛大さが失われることのないよう注意すること。
勇気と忍耐の修徳。困難な現実に突き当たったときに堅忍して働き続
けることができるように。自分をゆだねる修徳。起こる出来事によっ
てキリストの十字架に近づくとき。
第35条 創意工夫と柔軟性
良いことをしたいと望むことは、それを実践する最善の方法を探す
ことを意味します。ここで重要なのは、ニーズと具体的に可能なことを
正しくとらえること、神のみ言葉の光に照らされた霊的識別、率先し
て取り組む勇気、まだ試していない解決策を見いだす創意工夫、変化
する状況への適応、共に働けること、進んで評価を行うこと、などです。
フィリッポ・リナルディ神父はサレジオ会員に次のように言っていま
すが、これはサレジオ家族の各会に当てはまります。「人類のうちに絶え
ず生まれてくる善のあらゆる形に適応するこの柔軟性は、私たちの会憲
にふさわしい精神です。この精神に反する生き方が導入されるようなこ
とがいつかあるなら、そのとき、私たちの会は終わりを迎えるでしょう」33。 創意工夫を勧めるドン・ボスコの言葉は数多くあります。「危険な状 態にある青少年を救い、霊魂を神に導くのに役立つなら、わたしはあ えて無謀なこともする」34。「私たちの良心がゆるすかぎり、現代の要件、
その土地の習慣や伝統に適応しながら、彼らの望みに応えるために最
*33
*34
エジディオ・ヴィガノ、「フィリッポ・リナルディ神父─≪サレジオの精神≫の真のあかし人、
解釈者」最高評議会報332、1989.12.5
ヴェスピニャーニへの手紙, Epistolario CERIA III, p.166‐167;BM XIV, p.536
MB V, p.237
55
第3章 サレジオ家族の霊性
大限の努力を尽くしましょう」*35。
それは、ただ方策の問題にとどまらず、霊的な事柄です。なぜなら、
聖霊に従順に、また時のしるしの光に照らされ、自分たち自身と自分
たちの働きを絶えず刷新することを意味するからです。
20 世紀になって誕生してきたサレジオ家族の数々の会は、ドン・ボ
スコの忠実な創意豊かな息子であるそれぞれの創立者たちの、創意工
夫と柔軟性の実りでした。
第36条 サレジオの祈りの精神
サレジオの祈りは使徒的な祈りです。それは、神へと至るために活
動から出発する動きであり、思いと心は神の愛に満たされるので、神
から、神と共に、活動へと戻る動きです。
ドン・ボスコは祈りに長時間をかけませんでした。また特定の方法
や形は用いませんでした(ドン・ボスコにとり、「良いキリスト者とし
ての信心」で十分でした)。ドン・ボスコにおいて、活動と祈りは全く
1 つだったからです。朝から晩まで取り組んでいた尋常でないほどの
仕事はドン・ボスコの祈りの妨げにはならず、むしろ祈りを生じさせ、
導きました。そしてドン・ボスコの心の奥底で培われた祈りは彼を養い、
愛徳の力を彼のうちに新たにし、貧しい少年たちの益のため、もてる
すべてをかけて献身させました。
オラトリオという、ドン・ボスコの最初の施設に与えられた名前そ
のものが、その場所のすべてが祈りである、あるいは祈りになりうる
ということ、その家で行われる良いことはすべて、祈りの実りである
ことを伝えるために付けられました。その祈りとは、ドン・ボスコの
祈り、協働者、少年たちの祈りです。
*35
56
このように行き渡る祈りの雰囲気は、ドン・ボスコの霊性を生き、
その使命を遂行する人々にとり、典型的なものです。しかし、時間を取っ
て祈る祈りの時をおろそかにするわけではありません。祈りの時は、
神のみ言葉に聞き、愛をもって応えることによって養われます。こう
して、生活は祈りとなり、祈りは生活となります。
第37条 扶助者聖マリア:使徒的霊性の師
マリアへの信心は、ドン・ボスコの霊的・使徒的生き方を特徴づけ
た3つの信心のうちの1つでした(聖体に現存されるイエス、そして
教皇への信心と共に)。全サレジオ家族は、無原罪の扶助者の母として
の配慮によって誕生したマリアの家族として、自らをとらえています。
実際、すべての会が、この確信を会憲に表明しています。
サレジオ会にとり、扶助者聖マリアは、教育的・使徒的活動におけ
る模範、導き手36、養成体験における母、教師であり37、祈りのときに特
別に呼び求める方です38。 扶助者聖母会(サレジアン・シスターズ)にとり、おとめなる母マリア、 謙遜なはしため、救い主の母は、すべてのサレジオの召命の母、師で あり、「真の長上」です39。マリアは信仰、希望、愛の模範、神との一致、
母としての心遣いと優しさ、奉献生活、祈り、ゆだねる心、聞く姿勢、
温順さ、協働、使徒的愛徳の模範です40。 サレジアニ・コオペラトーリは、「無原罪の扶助者聖マリアの中に自 らの召命の最も深い要素を見いだす。それは、神の救いの計画の実現 における真の『神の協力者』となることである。」41
*36
*37
*38
*39
*40
*41
サレジオ会 会憲20、34、92条参照
同98条
同84、87、92条
FMA会憲17、18、44、79、114参照
同4、7、11、14、37、39、44、79、71参照
使徒的生活のプロジェクト第20条
MB XIII, p.210
57
第4章 サレジオ家族における交わりと使命のための養成
ADMA のメンバーにとり、マリアにゆだねるということは次のこと
を意味します。「福音的姿勢をもって日々の霊性を生きる。特に、絶え
ず行われている神のみわざに感謝し、困難や十字架の時にも、マリア
の模範に従い、神に忠実であることによって。」42 イエスのカリタス会にとっては、聖霊の勧めに従順して生き、イエス・ キリストを生活の中心にすえ、人々との関わりの中で、マリアへの心 からの愛と大いなる信頼を養い、日々の生活の中で神のみ旨を探す信 仰者の模範に倣うため、隣人に気を配る愛情深い母、神のみ言葉を聴 く御子の弟子、苦しむもののなぐさめ、キリスト信者の扶助者であり 人類の母なる方の模範に倣うために、マリアは助けてくださいます43。
Damas Salesianas(サレジオ婦人会)は、Ideario 会則に次のように
記されています。「マリアは、信徒の女性として献身した最初の人であ
り、忠実な自己贈与のうちに神のご計画を受け入れ、み言葉を生ける
ものとし、女性、伴侶、母、教え手、あかし人として、最初に福音化され、
そして福音を告げる者となった。マリアは、Damas Salesianasのメンバー
のインスピレーション、倣うべき模範である。以上のことから、私た
ちはマリアを、最初のDama Salesiana、手本、導き、インスピレーショ
ン、母、姉妹、使命における忠実な同伴者と宣言します。」*44
したがって、日々、マリアに信頼してゆだねることは、私たちの霊
性の特徴です。ゆだねることには、上向きの働きがあります。それは、
果たされるべき使命に惜しみなく応えるために、自分を捧げることで
す。しかし、下降の動きもあります。ドン・ボスコを導いた方、今も
ひきつづきドン・ボスコに起源をもつ霊的家族を導かれる方の助けを、
信頼と感謝のうちに受けることです。
*42
*43
*44
58
ADMA改訂版会則、第4条
イエスのカリタス会 会憲 第12条 参照
第4章
サレジオ家族における交わりと使命のための養成
サレジオ家族の各会は、共通に受け継いでいるものと、それぞれの
固有の特質から汲みながら、それぞれのメンバーの養成を担います。
しかしながら、共通の要素、一致点を見いだす可能性、期待される協
力の形を特定することができます。
第38条 固有のアイデンティティーの認識
サレジオ家族の交わりは、共有するカリスマと同じ使命、そして、
家族を構成するさまざまな会について知り、評価することに基づいて
います。実際、一致は決して画一的になることを意味するのではなく、
1 つの中心に収しゅう
斂れん
する表現の多様性を言います。
したがって、各会の賜物や固有の特質を享受するために、互いにつ
いての知識を促進する必要があります。各会の賜物や特質は、皆の益
となる宝です。
そのために役立つのは、折々にあるいは定期的に、非公式・公式の
会合、交流会や共同の祈りの時をもつことです。
「カリスマ的・霊的アイデンティティー憲章」、ドン・ボスコに関す
る文献、創立者・共創立者の伝記、サレジオ会総長の毎年のストレン
ナ、各会の計画、「ボレッティーノ・サレジアーノ(ドン・ボスコの風)」、
特に重要な使徒的体験などを配布し広めることは、相互理解と尊敬に
貢献し、同時に家族の一致を強めるでしょう。
ドン・ボスコによって創立された会、また、それぞれの地域に存在
し働いている会に、特別に配慮する必要があります。
Ideario Damas Salesianas 第 14 条
59
第4章 サレジオ家族における交わりと使命のための養成
第39条 共同の養成
精神の一致と使命のための一致を確かなものとするため、共同の養
成の時をもつことも必要です。特に、カリスマの本質的側面に光を投
げかける、あるいはそれを深く考察するため、また、共同のプロジェ
クトを計画するためである場合です。これらのことは、常に各会の正
当な自立性を尊重しつつ、しかしまた、一致を表し強める家庭的精神
を大切にしながら実施することができます。
共に養成されるため、何よりも、共に考えるようになることが必要
です。相手を自分のものの見方のほうへ誘導する危険が常にあるから
です。本当の議論と話し合いへの恐れに打ち勝ち、自らに集中するの
ではなく、それぞれが他者に心を向けるとき、自己肯定のためではなく、
それ自体が良いものであると見なされるものを目的とするとき、真理
と愛徳が1つになるときに、共に考えることは可能になります。
さらに、共同の考察と建設的対話のために、方法や手段を特定しな
がら、共に働くようになることが必要です。
いつでも、どこでも、共に祈ることが必要です。なぜなら、すべての
良いもの、義とされる正しいことを、一人ひとりのため、また全体のた
めに教え示してくださるのは、真理の光、一致の源である聖霊だからです。
共同の養成の機会は数多くあります。
・ カリスマ的体験のさまざまな側面についての勉強会。共有するも
のでありながら多様な、私たちの固有の霊性、ドン・ボスコから
受け継いだ遺産、時のしるしが指し示す挑戦、教会の主要な出来
事あるいは教皇と司教会議の教導職による重要な指針などについ
てです。
・ 青少年司牧の課題や問題、サレジオの教育法にまつわるさまざま
なテーマ、新たな福音宣教を視野に入れた宣教の方法、などにつ
いての話し合い。
60
・特別に困難な状況における、あるいは共に取り組む養成プログラムや
使徒的プロジェクトに関わる、識別の歩みへの参加。
この面で特に重要なのは、サレジオ家族の諮問委員会であり、すべ
ての会の参加と支えを必要とします。
第40条 多様な働く場
使命のためには、緊急なニーズをとらえ、良いことのために働くす
べての人と協力できることを示しながら、多様な文化的・社会的・教
会的環境の中に入ることが求められます。
そのために、偏見をもたずに、聞く姿勢を養い、疑いの目で見るの
でなく受容の態度を示し、嫉妬することなく評価し、傍観するのでは
なく参加する態度を身につけるように、自らを訓練する必要があります。
このようにするとき、教会の交わりが築き上げられる中で、信仰と
カリスマのインカルチュレーション(文化受容)に貢献することがで
きます。教会の交わりは常に、特定の会、あるいはサレジオ家族その
ものよりも、常に幅広いものです。
この養成は、各会・運動・グループの会合という具体的状況におい
て行われます。各会・運動・グループは教会の豊かさを表し、神の国
に奉仕します。
その中で第1にあげられるのは、大きな広がりをもつサレジオ運動
です。ドン・ボスコの霊的家族はその活性化の中核を形成しています。
養成に適した場としてはほかに、地方教会でサレジオ家族の会があ
るところ、そして同じ地域で働くほかの教会グループとの協力がある
ところです。さまざまな教会運動に与えられる神の恵みの多様な姿は、
固有の霊性や独自の使徒的あり方に表れ、それらは知られ、受け入れ
られるべきものですが、一方、私たちは自分たちのカリスマにおける
61
第4章 サレジオ家族における交わりと使命のための養成
アイデンティティーと固有の使命を通しての支援を、皆に差し出します。
それは、互いへの尊敬を教える養成、愛徳と、進んで協力すること、
忍耐と長期的視野をもって行動すること、時には求められる犠牲を受
け入れる心構えにおいて、惜しみない広い心をもつことを学ぶ養成です。
ドン・ボスコはすべての人に受容と感謝の思いと言葉をかけ、洞察
や体験、成果を皆と分かち合うことができました。私たちはこのドン・
ボスコの模範に勇気づけられるサレジオ家族として、受けた賜物を強
め、全教会と分かち合うように呼ばれています。
第41条 協働の方法論
共に働くということは、自然に実現するわけではありません。いつ
くかの本質的要素を考慮する養成が必要です。
1. 何よりも、共に計画することについて学ばなければなりません。
すべての教育的、使徒的な活動は、対象者の状況の分析から出発し、
特定の具体的な、短期・中期・長期的目標の達成を目指すもので
なければなりません。利用できる技能を活かし、多様なものの見
方を尊重し、一致点を見いだすことを促進しながら、そのすべて
を共に考察、計画する必要があります。
2. 連携調整の方策を共に考える必要があります。1つの事業のため
のさまざまなグループの連携は、放っておいては決して実現しま
せん。実際、いくつかの能力が求められます。解決しようとする
問題について正確な知識をもつこと、実施の目的を明確にするこ
と、行動のための可能性を現実的に斟しん
酌しゃく
すること、与えられてい
る人材や手段の評価を行うこと、自分が提供でき、提供するつも
りである支援についてありのまま伝えることなどです。
3. また、相互関係論理的結果を受け入れる必要があります。与
え、そして受けることは、決して一方通行ではありません。互い
62
の価値を受け入れ合うということは、自分に与えられている賜物
とほかの人たちに与えられている賜物を意識すること、自分の価
値とほかの人たちの価値を認めること、補い合う感性、アイディア、
技能を受け入れ、交換し合うこと、惜しみなく謙虚に自らの貢献
を果たすことです。
4. 最後に、責任を共に担うことを学ぶ必要があります。教育的・
使徒的分野での協働がうまくいくかどうかは、プロジェクトを運
営する主要な責任者を受け入れること、そしてほかの人々の責任
を認めることにかかっています。共同の計画を実施するために皆
が積極的に参加できるよう、すべての人に働くスペースを与えな
がら。
第42条 サレジオ家族の中の司祭の役割
第2バチカン公会議は、司祭を神の民の導き手、教育者として示し、
次のように述べています。「美しい儀式も盛んな会も、キリスト者とし
ての円熟に達するよう人々を教育するものでなければ、たいして有益
ではない。」45 そして、そのように述べる理由を示しています。「司祭たちは信仰に おける教師として、自分自身または他の人を通じて、信者が聖霊にお いて、福音に基づく自分の召命の開花、誠実で実行的な愛、キリスト がわれわれに与えた自由に到達するよう配慮しなければならない。」46
このように、サレジオ会司祭は、養成の分野で自らの最も重要な責
任に召されています。神のみ言葉、秘跡、特に聖体の秘跡、一致と愛
への奉仕は、教会の最高の宝です。
公会議の言葉を借りると、次のように言えるでしょう。サレジオ家
*45
*46
司祭の役務と生活に関する教令6
同
63
第5章 サレジオ家族の構成、活性化
族のような使徒的家族を霊的に形作ることは、その礎、中心として聖
体の祭儀がなければ不可能です。家族の精神を作り上げるためのあら
ゆる教育が、聖体から生まれなければなりません*47。
サレジオ家族の各会は、この養成のための要件を常に示してきたも
のであり、本書においてこれを再び強調します。
*47
64
同参照
第5章
サレジオ家族の構成、活性化
第43条 成長する家族
サレジオ家族は、過去数十年の間、真の春を体験してきました。聖
霊の促しのもと、新たな会が最初からあった会に加わり、交わりは豊
かにされ、サレジオの使命は広がりました。
家族の成長と、使徒的活動が世界のさまざまな国で数多く増えたこ
とは、誰の目にも明らかで、活動分野が広がったことは多くの青少年
や大人の益となっています。このことから、私たちは神に感謝するよ
う招かれるだけでなく、私たちの責任が大きくなっていることを認識
させられます。実際、私たち家族の召命は、ほかのあらゆる召命と同
じように、使命に奉仕するもの、特に青少年の救い、中最も貧しく、
見捨てられ、危険にさらされた青少年の救いに奉仕するものです*48。
正式にサレジオ家族として認められている会は次のとおりです。
1.聖フランシスコ・サレジオ修道会
2.扶助者聖母会(サレジアン・シスターズFMA)
3.サレジアニ・コオペラトーリ(サレジオ協力者会)
4.扶助者聖マリアの会(ADMA)
5.ドン・ボスコ同窓生会
6.扶助者聖母同窓生会
7.VDB(ドン・ボスコ女子在俗会 Volontarie di Don Bosco)
8.イエス・マリアの御心修道女会
*48
パスクアーレ・チャーベス、2009年ストレンナ解説「サレジオ家族の昨日、そして今日:
種は木に、そして木は森になった」参照
65
第5章 サレジオ家族の構成、活性化
9.サレジオ御心奉献者会
10.聖家族の使徒会
11.イエスのカリタス修道女会
12.扶助者聖マリア宣教姉妹会
13.神なる救い主修道女会
14.汚れなきマリアの御心侍女会
15.少年イエスの姉妹会
16.Damas Salesianas(サレジオ婦人会)
17.ドン・ボスコ男子在俗会(CDB)
18.無原罪の扶助者聖マリアのカテキスタ姉妹会
19.元后無原罪の聖マリア修道女会
20.復活の主のあかし人TR2000
21.大天使聖ミカエル修道会
22.御復活姉妹会
23.主の宣教姉妹会
24.主の弟子の会‐在俗会
25.“Canção Nova(新しい歌)”友の会
26.大天使聖ミカエル修道女会(ミカエリート)
27.扶助者聖マリア姉妹会
28.ドン・ボスコの使命共同体(CMB)
29.元后無原罪の聖マリア会
30.ドン・ボスコ聖母訪問会(VSDB)
第44条 開かれた家族
青少年の救いのための幅広い運動という特質をもち、宣教地で、働
く人々の中で、広報や、召命のための働きにおいて、使徒職の多様な
形のうちに自らを表すサレジオ家族は、総長による公認を求めるほか
66
の会にも開かれています。
サレジオ家族として認められるために不可欠な規準は次のものです。
1.「サレジオの召命」に参与していること。言い換えれば、ドン・ボ
スコの人間的・カリスマ的体験を十分に共有していることです。実際、
ドン・ボスコはすべての会にとり、弟子としての、また使徒職のため
の固有の道の、起源となるインスピレーションです。すなわち、ドン・
ボスコはインスピレーションの源、一致の拠りどころです。
2. 青少年や社会のふつうの人々のためのサレジオの使命に参与して
いること。すなわち、各会はその固有の目的の中に、表現におい
ては形や強調点がさまざまに異なるとしても、サレジオの使命の
典型的要素を含むということです。
3. 精神、教育法、宣教のスタイルを共有していること。言い換え
れば、ドン・ボスコの霊的・教育的遺産を共有しているというこ
とです。
4. サレジオの精神に則した福音的生活。すなわち、聖性への道とし
て福音的勧告からインスピレーションを受けた生き方です。それ
は、修道奉献の誓願によって、あるいは各会にそれぞれの特質を
与えるさまざまな形の約束、あるいは誓約によって具体的に表さ
れます。
5. 積極的な兄弟愛。サレジオ家族の中のほかの会と、調和と協同の
うちに連携し、働くことへと各会を導くものです。
第45条 拠りどころとなる中心
カリスマ的性格をもつ使徒職の交わりによって、サレジオ家族を構
成する各会は、ドン・ボスコの後継者であるサレジオ会総長のうちに、
父、家族そのものの一致の中心を認めます。
そのため、ドン・ボスコのカリスマの豊かさの特別な継承者である
67
第5章 サレジオ家族の構成、活性化
サレジオ修道会は、サレジオ家族全体を活性化する責任を担っていま
す。実際、サレジオ会は、特別な「責任を負っている。それは、相手
も自分も豊かにし、より効果的に使徒職を行うため、同じ精神を保ち、
対話と兄弟的な協力を促進する責任である」*49。したがって、サレジオ
会は、統治の権威によってではなく、謙遜な喜びに満ちた献身による
奉仕を遂行します。受けた賜物への忠実の道を促進し、その伝達、共有、
実現を育むためです。
第46条 活性化を行う組織と会合の機会
サレジオ家族の持続的、効果的な活性化を確かなものとするために、
なくてはならない調整を行う組織があり、会合の機会をもつことが奨
励されます。
世界、地域、国、管区、支部の各レベルで、一致と活性化はサレジ
オ家族の評議会あるいは諮問委員会によって支えられ、強化されます。
さまざまなレベルでの諮問委員会の会合は、次の目的の達成を目指
します。
1. ドン・ボスコとその生涯、教育、霊性をより深く研究、考察する
こと。ドン・ボスコの使徒的計画と司牧活動のための規範を、よ
りよく知り、理解し、取り入れることができるようになるためです。
2. 帰属意識を強め、家族の中のさまざまな会についての直接的、具
体的な知識と、それぞれの固有のアイデンティティーへの評価を
育む。
3.会合や共同の養成プログラムを企画する。
4. 社会が、またサレジオ家族がその一員である地方教会が前にして
いる司牧上の挑戦を知り、各会の固有の特質に従い、サレジオの
*49
68
使命における交わりのうちに、司牧のための協同の働きの可能な
あり方を検討する。
5. 同じ地域のすべての会が共有する具体的な使徒的取り組みを、で
きるだけ頻繁に実施に移すように努める。
世界諮問委員会は毎年、サレジオ会総本部で会合をもち、来たる司
牧年度のために、活性化の基本的な指針を提示します。
各地域あるいは管区で、毎年、サレジオ家族の日が祝われます。こ
れを養成と体験の分かち合いの機会とすることが勧められます。
世界レベルでは、毎年、サレジオ家族霊性週間が開催されます。霊
性週間は、交わりと振り返り、分かち合いの時となります。特に、「総
長のストレンナ」の内容について深める機会となります。この文書は、
共に考察を行い、サレジオの霊性と使命の特定の側面を具体的に実践
に移すための招きとして、毎年、ドン・ボスコの後継者によって提示
されます。
サレジオ会 会憲第5条③
69
第47条 祈り
若者の父、師である聖ヨハネ・ボスコよ
あなたは聖霊の賜物に素直に従い
「小さな者、貧しい者」への
優先的な愛という宝を
サレジオ家族に残してくださいました。
私たちの心に
良き牧者キリストと同じ思いを培い、日々、この小さな人々のため
神の愛のしるしと担い手になれるよう
私たちに教えてください。
いつくしみに満ちた心
仕事における忍耐、知恵ある識別、
教会の教えをあかしする勇気、
宣教のための開かれた心を
サレジオ家族一人ひとりのために
主に取りなしてください。
主が私たちと結んだ特別な契約に
忠実に応える恵みが与えられよう
私たちを助けてください。
私たちが扶助者聖マリアに導かれ
神の愛に至る道を
喜びをもって、若者と共に
歩むことができますように。
アーメン。
70
ドン・ボスコのサレジオ家か
族ぞく アイデンティティー憲けん
章しょう
CARTA D’IDENTITÀ CARISMATICA
della Famiglia Salesiana
2012 年9月21日 初版発行
訳 者 佐倉 泉
発行者 サレジオ修道会
発行所 ドン・ボスコ社
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-9-7
TEL 03-3351-7041 FAX 03-3351-543
